指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

懐かしの一九八〇年代。

懐かしの一九八○年代 ‘THE SCRAP’

 1987年初版なのにこの副題となっているのには作者の実感が反映されている旨本文に記載があるけど今となっては本当に懐かしの1980年代ということになる。僕ももう結構年なので取り上げられてる人物のうち古いジャズ・ミュージシャンを除けば大体誰だか知ってるけど今の若い人だとほとんどわからないかも知れない。当時のアメリカの雑誌を読んで筆者が面白い記事を訳して紹介するという趣向の本で「NUMBER」誌に連載されていたということだ。だからこの年代にどれくらい興味があるかないかで楽しみの度合いが随分異なると思う。個人的にはいちばん古い日付の記事でも高校を卒業した後なのでまあリアルタイムと言っていい。だからとても楽しく読んだ。それを知ったからってどうなるものでもない話ばかりだけど楽しいことは楽しい。
 ひとつだけ発見があった。「ニューヨーカー」に載ったドナルド・バーセルミの短篇「落雷」について筆者は、「落雷に打たれながらも生きのびた人」のインタヴューを集めるフリー・ライターの話(p.24)、と書いてるんだけど、これって「海辺のカフカ」に出てくる佐伯さんが高松を離れてる間に一時就いていたと言われる仕事と同じですよね。こんなところに元ネタがあったなんてどれくらいの人が気づいてるんだろう?