指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

お金の話。

 今の僕の収入だと光熱費まで含めた生活費とうちと塾の家賃その他(たとえば三台のスマホとうちのwifiを合わせて月2万5千円もかかる!)を支払うのに精一杯でたとえば子供の予備校の受講料とか大学を受ける受験料とか不意の出費まではとてもまかない切れない。予備校の受講料は年間80万円ほどで二回の分割でよかったのでとりあえず初回の50万円は母親に借り二回目の30万円ほどは新型コロナでもらえたひとり10万円の給付金を親子三人分でちょうど30万になったのでそれを充てた。母親からは前職を辞めてこれまでにも100万円ちょっと借りてるので借金は全部で200万円近くになるが返すあてはない。母親にしても返してもらえるとは思ってないだろう。盗っ人猛々しく聞こえるかも知れないけどうちの母親というのはまあそういう人だから。今年の子供の受験料は家人の原稿料でまかなっており僕は一切払ってない、と言うか払おうにも払えない。来年の受験料もそうなると思う。つまり家人は事実上子供の受験料のために苦労して小説を書いてることになるけど大変申し訳ないとは思うけど今の僕にはどうしてやることもできない。さらに問題になってくるのが子供が大学に入るときの入学金と受講料ということになる。私立文系なので初年度120万円前後かかることになっている。いくら図々しいとは言えさすがにこれを母親に頼む訳には行かない。春から真剣にバイトに勤しめばそれくらい貯められたかも知れないけど今更言ってもしょうがない。家人の新刊の刷り部数がこれまででいちばん多かったので全部売れれば数十万円の稼ぎになるがそもそも全部売れるかわからないしいつ手に入るお金なのかもわからない。しかもそれだけでは足りない。よそから借金しようにも今の塾の経営状態ではどんな金融機関もお金なんか貸してくれないだろう。ではどうしたらいいか。
 方法のひとつは神頼みだ。実は今年の初詣でおみくじを引いたら大吉が出たんだけど(普段あまり大吉を引かないのでうれしくてはっきり覚えてる訳だ。)今年何かいいことがあったかと言えば特になかった。子供は大学に落ちたし僕の仕事は最悪ではないにせよはっきり言って鳴かず飛ばずだしそうでなくても新型コロナだ。ということは今年が終わるまであと十日くらいのうちに大吉の御利益が現れなければ辻褄が合わないことになる。この十日くらい限定で現れる御利益と言えばこれはもう年末の宝くじが当たることくらいしか思いつけない。ここ何年か余裕がなくてまったく買ってなかったけど冬期講習に申し込みがあってほんの少し懐が温かかったので買ってみることにした。しかも十億当たるとか言う年末ジャンボは要らない。ミニの五千万円でいい。それだけあれば中古マンションの一室を買って猫を三匹買うか引き取るかして子供を大学に入れて卒業させることができる。充分過ぎる幸せだ。猫を飼うことは夫婦の悲願だ。
 でも人はきっとそんな夢を哀れむことだろう。自分でも書いててそこはかとなく哀しい。なのでもっと現実的な解決策も用意している。それは生命保険。最後の砦だ。僕が死ぬと家人は一千万円受け取ることができる。大した金額じゃないけどそれを今解約したらいくらくらいになるのか。来年子供を大学に入れるくらいにはなるんじゃないか。それで保険会社の担当の人(一度も会ったことがない。)に尋ねると家人が受け取る額の三分の一くらいにはなる由。他に奨学金も申し込んでいるのでそれも受け取れるとなると合わせて大学に四年通わせるには充分な金額になる。そのかわり僕が死んでも家人は何も受け取れなくなるし僕も今後病気や怪我があったときどんな補償も受けられなくなるけど子供のために背に腹は代えられない。それにそうまで悲壮な覚悟をしなくても金額の一部分だけを解約したり、プールしている資金から借金することも可能の由。これは後日時間をとってもらって担当の人と打ち合わせる予定になっている。
 でも僕としてはもちろん五千万円当たって欲しい。いやマジで。