こんな風にアーティストをひとりひとり取り上げてたら無限に書き続けられそうだけど。松山千春さんとかさだまさしさんとかオフコースとかを真っ芯で聴いてたのは中学生から高校生くらいまでの今から思うとそれほど長くない期間だった。大ヒットした「季節の中で」や「長い夜」はでもむしろあまり好きではなく個人的にはこの「恋」がいちばんのお気に入りだった。今回いろいろ聴き直してもやはり同じだ。しかも他の曲とは割に別格でいいと思う。一緒に暮らしてるらしき男に一方的に別れを告げる女の人の一人称で語られていてでもメジャーコードで暗くはない。むしろこうなんか吹っ切れたと言うかどちらかと言えばさばさばした感じがとてもよくリアルに伝わって来る。でもこういう情緒が中学生にもわかるのか疑問になるほど難しい内容でもない。平易なんだけど深みを感じさせる。そこがこの曲の魅力だと思う。加えてこれは勝手な感じ方だと思うけど松山さんの曲ということでその出身地である北海道のどこかにある部屋が思い描かれる。なんとなく涼しくて女の人の手できちんと掃除され整頓された部屋だ。男の部屋なのであまり物は置いてない。そんなどちらかと言えばがらんとした部屋をその女の人の心があたたかな生命感で照らし出してるようなイメージだ。それはとても鮮やかで好ましい印象を与える。個人的な思い込みに過ぎないんだけど今も同じような構図を感じ取ることができて四十年近い時間を飛び越えたような気がした。