指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

夏休みの子供、もうすぐ二十歳編。

 一浪して今春かろうじて大学生になった子供は今月末で二十歳を迎える。学期中はほとんど休まず大学に通い友だちができないのが悩みみたいだけどもともとどこにでも臆することなくひとりで出かけて行く子なので親としては特に心配してない。定期を持ってるので学校帰りに特になんでもない駅で途中下車してあたりを歩き回ってると言う。すごくおいしそうなおそば屋を見つけたので今度時間があるとき食べに行くとか楽しそうに話してくれる。週に一度日曜日高校のときの友だちと池袋へ豚骨ラーメンを食べに行きその後午後を塾で一緒に過ごしてるようだ。これは学期中もそうだったし夏休みに入ってからも変わらない。ひとりでラーメンを食べに行くようになったのは高校に入ってからだろうか。もっと前中学生の頃だったろうか。覚えてない。学期中は朝早い日もあったけど夏休みに入ってからはほぼ毎日昼近くまで寝ている。春にやったスーパーのバイトで懲りたようでそれ以降バイトをやるとは言わない。やらなくて済むならやらなくていいんじゃないかと思って見ている。しかるべき年になればいやでも毎日仕事しなければならないんだしそれまでは好きにしてればいい。刺身とお寿司が大好きで以前はよく回転寿司を食べに行ったものだけどコロナ禍でここ二年近くは控えていてその代わりデパートやスーパーで折り詰めを買って来て食べさせると大喜びで食べる。サーモンがいちばん好きみたいだ。ただ甲殻アレルギーが出たことがあり火を通してあれば問題ないと医者は言うんだけど一応エビやカニは避けている。折り詰めに入っていればそれは家人か僕かが食べる。そう言えば一時期僕が高校生の頃父親が勤めから帰ってくるときによく寿司屋の折り詰めを買って来てくれた。僕が喜んで食べたからだろう。父親も今の僕と同じような思いで我が子の好物を買って来て食べさせていたんだろうと思うと胸が詰まる。その父親も今年亡くなった。子供のこともすごくかわいがってくれた。
 太ってるのを気にして最近夜ウォーキングを始めたことは前にも書いた。家人がスポーツウェアの上下を買って来てやり毎晩それを身につけてかなり長い距離を歩いてるようだ。食事も少し減らし気味にしてるようだけど親というのはやはり子供におなかいっぱい食べて欲しいと思うもので僕なんか以前と変わらぬ量を買って帰りそうになってよく家人に止められる。まあ本人もやる気でいるみたいだしここは協力してやらなければならないんだろう。
 小さな男の子を連れたお父さんやお母さんを見かける度にうらやましくて仕方ない。すごく楽しくて充実してるだろうなあと思う。でもそれはほんとは錯覚で育ててる最中というのはこれで正しいんだろうかという自問の連続でもある。それでもやっぱりうらやましい。今からこうなのだから孫ができたらさぞかし溺愛することだろうと先が思いやられる。孫だったら女の子でもきっとすごくかわいいに違いない。でももうすぐ二十歳の自分の子供だって小さい頃と同じようにかわいい。それは一生変わりないんじゃないかと思う。