指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

山本義隆さん二冊目。

 福島の原発事故は想定外の事故とは言えない。なぜならそもそも原発とは未完成な技術に過ぎず事故はある意味で必然的について回るものだからだ。それはどうしてなのか。そして日本はその未完成の技術にいわゆる「安全神話」を隠れ蓑にしながらなぜここまでこだわり続けて来たのか。この前読んだリニア中央新幹線に関する本と同様原発がプロジェクトとして未だに破棄されてないことが本当に信じられなくなる。原発推進に舵を切った当時の指導者の述懐や現場の技術者の証言も非常に説得力があるし原発を火力や水力といった他のエネルギー開発となぜ同列に扱ってはいけないのかという解説も読んでてそら恐ろしい。また人類が自然とどう関わり自然に対する解釈をどう変えて来たかを科学、哲学、文学を行き来しながら中世までさかのぼって跡づける手並みは筆者の面目躍如とも言える鮮やかさだ。またその博識さも驚異的に思われる。筆者の本はこれで二冊目だがおそらくまだ主著と言えるものには当たってない。より本格的な論考もこれから読んで行こうと思う。すでに借りてある。
 個人的なことを言うとこの本を書店で見かけた十年前に一度読んでみたいと思ったことがあった。なぜ読まなかったかと言うと難しくて読めないんじゃないかと勝手に思ったからのような覚えがある。核分裂の過程に関するくだりはさすがに歯が立たなかったけどそれ以外は本当に平明に書かれていて対象を深く理解すればするほどそれに対する解説はわかりやすくなるという俗説にも信憑性があるのかなと思われるほど読みやすかった。ページも百ページ足らず。この問題に少しでも興味があるなら読んでおきたい気がする。