指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

雨の村上春樹ライブラリー。―村上春樹ライブラリー十一回目。

 朝から冷たい雨が降っていた。VANのダッフルコートを濡らすのはいやだったのでほこりを落としたばかりのブルックスブラザーズのダッフルコートを着て十一回目の村上春樹ライブラリーに行く。雨の日は初めて。外は思いの外寒くて指先がかじかむ感じがある。受付を済ますと今日の入館カードのナンバーは20。ちょっと迷った後「全作品」の後半の七巻目を取って解題を読み返す。前回あまりぴんとこなかった言葉が今回は割に胸にしみる。よかった。と思う。でも今日は訳あってメモ帳を持って来なかったので抜き書きは無し。読み終えると地下に下りてカフェでまたジンジャーエールを飲む。いすに座って窓から雨を眺める。今日のカフェは珍しくとても空いている。雨のせいかもしれない。雨を眺めてから再現された村上さんの書斎に目をやる。そして辛いジンジャーエールを口にしながらまた雨を眺める。飲み終えるとグラスを返して階段を上って展示室に戻る。小さなツアーのようなものが開催されていてアナウンスする先導の人に従って何人かのお客さんが着いて歩いている。いつもの席の両隣に他のお客さんがかけているので「全作品」の後半の五巻目を手にして別の席に座る。「ねじまき鳥クロニクル」の第三部が収録されていて解題もそれについて述べられている。読むのは二度目、いや三度目かな。全部読み通すと帰る時間が来てしまう。重いダッフルコートに袖を通してマフラーを丁寧に巻く。それから入館カードを返却しスタッフさんに挨拶して傘を差してキャンパスを歩く。今日はなんか力が抜けてる気がする。いつもはこう意気込みみたいなものが割に充実してるけど今日はそういうのが感じられない。それはそれで悪くない。次回もOrange Catでジンジャーエールを飲もう。ちなみに今日もまだなんとかオーガンジー製のカーテンははずされたままだった。
 昼寝から起きると雨はやんでいる。塾で生徒さんを待つ間にこの前の「村上RADIO プレスペシャル」をらじれこで聴く。村治佳織さんのギターをバックにした「ふしぎな図書館」の村上さんによる朗読。羊男の発言では声色を変えたりしてなんだか親近感が湧く。来月もライブラリーでイベントがあるということだ。一度行ってみたいけどどうせ当たらないだろう。ところでこの番組はパーソナリティーがやや村上さんをマンセーし過ぎなんじゃないかという気がする。聴いててときどきどうかと思うことがある。まあお前に言われたくないと言い返されるかも知れないけど。