指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

割に疲れた。

 冬期講習も何日目かだ。午前中から仕事をすると割に疲れる。他の仕事と比べると体力的には楽なはずだと思う。でもなんか着実に疲労がたまって行く感覚がある。こんなことでアルバイトなんてできるんだろうかと不安だ。まあやらない訳にも行かないんだけどもはや。数年前よりも細かく衰えているんだろう。心の方はそんなに老け込んでない気がするし頭もはげてないし歩こうと思えばそれなりに歩ける。それでも状況は少しずつ悪くなって行く。疲れがたまる。簡単な計算問題が億劫になる。英単語の綴りだって忘れる。中学校レベルの英単語の綴りなんて自慢じゃないけどひとつも忘れたことなんかなかった。まあ大学受験レベルの英単語ならひと山いくらで売り払ったみたいにきれいに忘れてしまった。でも中学校で覚えた単語は忘れずにいてだから今の仕事もさして抵抗なくこなせていた。それがホワイトボードに向かうとふとしたときにあれっと思うことがあるようになった。あと漢字も忘れる。忘れ始めたのは英単語よりもそっちの方が先だったかも知れない。なんかゲシュタルト崩壊でも起こしたみたいに自分で書いててそれが正しい漢字なのか間違ってるのかが突然わからなくなる。視力も落ちたようで一応眼鏡をしなくても運転免許の更新は通るものの問題集の細かい文字なんかが読めないことがたまにある。あと恐いのがよくよろけるようになったこと。特に床に転がったぬいぐるみなんか踏みつけると―うちにはなぜか大小様々なぬいぐるみがおびただしい数あって日常的に何体かが床に転がっている―そのままばったり倒れそうになるほど激しくよろける。立ったまま靴下をはこうとしてもよろけるしもちろん酔っ払っていれば立ち上がっただけでよろけることもある。これは今のところ自分はよろけるようになったぞと自分で自分に厳しく言い聞かせることで対処していて幸い大ごとには至っていない。でも今後よろけ具合が激化するようならどうなるかわからない。
 近くの工事現場なんかでは僕よりも年上に見える警備の人が交通誘導なんかしててバイトだとしたら本当に頭が下がるなあと思う。自分がそこに立って同じことをしててもまったく不思議じゃないんだなと思う。でもいつも書いてるようにもうちょっとこう自分の能力を生かせる仕事を見つけたいなあと思っている。能力ったってたかが知れてるし要するにただわがままなだけかも知れないんだけど。