指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

今日は比較的楽だった。(21日土曜日の記事です。)

 今日のバイトは比較的楽だった。まず別部署での仕事はやはり慣れてしまえば本業よりも楽だ。残り二時間の本業も土曜にしてはお客さんが少なくて楽だった。ひろたんとはそんなに話せなかったけど水曜日の最終面接についてと六月のシフトについては最低限話すことができた。面接は合否がまだ出てないこと。自分なりには駄目そうな気がしてること。六月の日曜はこの前に懲りて全部休みの希望を出したと言うとでも日曜午前中のいつもの三人組(ひろたんともうひとりの男子学生さんと僕)はどうなるんですかと言うのでそんなものが彼女にとって楽しかったのかなと意外に思いながらじゃあ六月の日曜午前中は結構シフト希望出してるんですかと逆に尋ねるとそう言えば一回くらいしか出してないと言う。なんだ特にこだわりないじゃん。土曜は全部出してるとのことで僕も土曜は全部希望を出してるので六月もまた何回か彼女と組めるかも知れない。どうせ日曜は希望者がショートすると思うので彼女のシフトが入ってる日曜日に追加でシフトを入れたっていい。なんか我ながらストーカーじみてるけどこの子とはほんとに気が合って話してて楽しいので。それにこの前のすごく混み合った日曜ふたり態勢でもお互いを思いやり合いながら戦った同志なので。そういうことにモチベーションを見出すことができると仕事はぐっと楽しくなる。でももちろんそれは愛とか恋とかいう感情とは無関係だ。
 そういう意味では僕にはもう老いらくの恋なんてするエネルギーは残ってないんじゃないかという気がする。心を満たすには家人と子供がいれば充分だ。それ以上の濃い感情は心にしんどい。でも時々甘い夢を見る。今朝も二度寝してうつらうつらしてるうちによく知ってる(気がする)若い女の子が夢に出てきた。若い女の子と言っても夢の中の自分よりは年上でつまり夢の中の自分はどう考えても十代中頃くらいなんじゃないかと思える。しかもそれはいとことかはとことかそういう親族の女の子で彼女と僕は長い間の知り合いで血でつながっているもの同士特有のある親密さに包まれている。そして彼女はとても悲しんでいる。彼女には婚約者かそれに近い恋人がいたんだけど最近行き違いがあって別れてしまった。そのことで彼女は僕に慰めとかそういうなんらかの温かみみたいなものを求めている。そういうことが僕にはわかっている。もちろん僕は彼女のことが気に入ってるし何か力になってあげられたらと思う。彼女が求めてるのは僕からの温かみを通り越して僕自身なんじゃないかという気もする。そしてそうだったらどんなにいいだろうと思っている。でもさすがにそこでオレ結婚してんじゃんという自制がやって来る。そして目が覚める。
 目が覚めてから考えてみるとそんな女の子なんて親族にはいないことに気づく。そしてその子にまったく見覚えがないということにも。それは無意識がつくりあげた架空の女の子だ。でも誰とも知れない不特定の異性を追い求めていた若い頃の体験と実感がまだ心のどこかに残っていると考えないとその女の子の出所はわからない気がする。それが残っている限り僕は繰り返し十代に戻って行き繰り返しお気に入りの女の子の登場する甘い夢を見ることになるんだろう。それはそれほど悪くない感じだ。とても淡くて心にかける負担がほとんどないように思われるから。なんだか我ながら心に重い負担をかけることをすごく避けたがってるみたいだ。それが年を取ることと関係あるのか単に臆病なだけなのかは考えてもよくわからない。