指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

新人さんに仕事を教える三日間。

 今朝早く子供が大坂から無事に帰って来た。本当によかった。
 一昨日バイトに行くとなんて言うか施設のいちばんトップの人がわざわざ僕を呼び止めて今日から新人のバイトさんが来る旨の話をいきなり始める。その日は僕よりもキャリアが長く仕事にとても忠実なバイトの学生さんが一緒のシフトに入る予定だったのでじゃあその人について仕事のレクチャーを受けるんだろうと思って名前を挙げて○○さんにつくのかと尋ねると僕にお願いしたいと言う。随分株が上がったもんだ。着替えて仕事場に行くと案の定その学生さんがやる気満々で新人さんと話してたのでとりあえず自己紹介をし合ってから僕が教えるよう上に頼まれたのでと断って新人さんを引き取った。それで5時間OJTの形で教える。こちらも学生さんでとてもまじめそうだ。はい、はい、と歯切れのよい返事をしながら話を聞く。この仕事は不文律みたいなものも結構多くてそういう意味ではわかりにくい部分がある。僕も初めは割に戸惑ったし今も時々何かの判断に迷うことがある。だから自分の言うことは絶対じゃないかも知れないし他の人はまた違ったことを言うこともあるだろうからそこは自分なりの判断でやり方を考えて下さいと伝える。聞きようによっては初めから教えるのを諦めてるような言い分だ。でもすごく率直になるとそう言うしかない。それでもまあ大体のところはわかってもらえた感じでその日のバイトは終わった。帰り際にそのトップの人のところに行ってその旨を伝えると明日もその新人さんが来るので引き続きついて欲しいと言われる。僕のときは先輩にフルについてもらったのは確か一日だけだったと思う。それに教えるというのもなかなか気をつかって疲れる。でもそれ以上の断る理由も見当たらなかったので引き受けた。
 その翌日は昨日の日曜日。シフトはひろたんともうひとりの男子学生と僕のいつもの日曜午前の三人組だ。ただ六月にこの三人組が揃うのは最初で最後。ひろたんがこの日以外日曜のシフトを入れてないからだ。この男子学生にも名前をつけておこう。かごくんでいいか。かごくんは日曜日の午前中しかシフトの希望を入れない。だから日曜の午前に入ればほぼ必ずかごくんと組むことになる。見かけはストイックそうだけど話すと案外気さくでいろいろ話してくれる。遅刻が多いということで上の覚えはめでたくないそうだけど個人的には嫌いではない。この前日曜のシフトでひろたんとふたりになってえらい目に遭ったのも実はかごくんの遅刻と言うか無断欠勤のせいだったんだけど。でもまあそれはそれだ。新人さんは同じ学生ということでかごくんと話が合うみたいでふたりで話し込む。ひろたんと僕もそれとは別にふたりで話す。仕事前ののどかなひとときだ。この日は日曜にしては集客が少なくて仕事は比較的楽だった。新人さんには前日を補足する形でさらにやり方を説明する。自分のやるべき仕事を新人さんに任せて自分は見てるだけという時間も長いのでそういう意味でも楽だったかも知れない。仕事終わりに今後のシフトがどう入るかわからないと言うので事務所にいたシフト係のしーちゃんに声をかけて話し合ってもらう。それでいったん帰宅し夕方二度目の出勤。するとしーちゃんが近づいて来て19日と26日の日曜日出勤できないかとの打診。19日は出勤すると社則に定められた連勤の上限を超えるので出られないと思うと言うと代わりに前の日の土曜に休んでいいと言う。わかったじゃあ19日か26日のどっちかでもいいかと言うと26日に出てその前の日の土曜日を休むことに決まる。まだシフト表は出てないものの土曜日にはひろたんが入る可能性が高いことに後から気づいた。彼女と組む機会を一回フイにしちゃってすごく残念。
 そして今日。朝7時過ぎにバイト仲間のうっちゃんからラインが来て今日から旦那さんがバイトに入るので僕にいろいろ教えて欲しいということだった。旦那さんがバイトに入るというのは聞いてたけど仕事を教えるならうっちゃん自身の方が僕なんかよりずっと適してる。ただやはり身内の情みたいなものがあってあまり客観的になれないのかなとも思った。感情的になっちゃうとか。僕が自分の子供に勉強を教えづらかったのと同じことかも知れない。仕事場に行くとうっちゃん夫婦はすでに出勤しててかなり前から旦那さんはレクチャーを受けてたらしい。だったらそのまま全部教えちゃえばいいのにとも思ったけどうっちゃんの頼みではむげには断れない。OJT三日目。なんかこちらも教えるツボがつかめて来たような気がする。でも仕事場に身内を入れるというのはよく考えた方がいいと思う。本人たちは気づかないかも知れないけど周りは結構気をつかうもんだよ。