指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ねひちゃんの復帰。

 障がいを持つねひちゃんが今日からバイトに復帰した。○○さん(僕のこと)に会えてよかったあと言うので君がいなくて寂しかったよと返した。それは嘘じゃない。明日も明後日も来るからねと言うとその次は休みなんですかと尋ねる。うん木曜日は休みと返すと来て下さいよおと言うのでやだよたまには休ませてよと答える。その代わりその日は○○さんも○○さんも(まーさんとうっちゃんのこと)いるから大丈夫でしょと言うと少し安心したみたいだ。自分でも人見知りと言ってるようにこの子はなかなか人に慣れない。特に社員さんは煙たいみたいで社員さんに囲まれると黙っている。もっとも社員さんも社員さんでこの子をどう扱っていいかわからず持て余してるようにも見える。まあだからこそバイトに面倒を見させてるんだろう。まーさんやうっちゃんに比べても僕の方がシフトに入る頻度が高いのでそれで僕には気を許してるみたいだ。僕ももう彼女の扱いには慣れたので一緒に仕事をすることに別段抵抗のようなものはない。彼女に任された仕事のひとつを手伝いながら君がいない間この仕事僕がひとりでやってたんだよと言うとすいません本当にすいませんと答える。前にも書いた通り責任感は強い。でももちろん謝ってもらおうと思って言ったのではなくその仕事をやりながら君のことを思い出してたんだと続けたかったんだけどうまく伝わりそうになかったので仕方ないっしょ病気だったんだからと返しておく。
 問題は自分がどうしてそれほど親身になって彼女に接してるのかということだ。うちの子が重なって見えるからかと言うとそれはない気がする。慕われてるからかと言うとそれでは因果が逆だ。慕われてるから親身になってるんじゃなく親身になってるからこそ慕われてる訳だ。誰かが彼女に仕事を教えなければならないしだったら自分が教えてやっても構わないと思ってるのかと考えるとそれは少しあるみたいだ。面倒見のよい自分という像に酔ってるだけなんじゃないのと意地悪なつっこみを入れると正直それはいくらかあるかも知れない。でも彼女をほっておけない主たる要因と言うにはやはり弱い気がする。自分より弱いものは守らなきゃいけないとかそういう感じなのかも知れない。完璧と言うにはほど遠いけど今のところそれがいちばん腑に落ちる説明のように思われる。