指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

十数年前のリーヴァイス。

 普段はユニクロの濃いめのベージュのチノパンを愛用している。色味がとても気に入っている。若い頃からベージュのチノパンが好きで高いものだとJプレスのとか前にも書いたようにラルフ・ローレンのラフパンツなんかをよく履いていた。それから貧乏になってユニクロのものをもう随分長いこと履いている。と言うかもうどこもかしこもユニクロのものしか身につけてない。白のクルーネックのアンダーシャツこそ襟がくたくたになるのが嫌でユニクロのものは買わないとは言え後はユニクロのアンダーパンツの上にユニクロのチノパンを履きユニクロボタンダウンシャツを着てユニクロのパーカか今年買ったコットンのセーターを頭からかぶる。ソックスもユニクロ。ハンカチだけは無印良品のものを使ってる。デザインと吸収力が気に入ってる。フットウェアはサンダルはホーキンス。スニーカーはアディダス。それと冬のコートだけはちょっと豪華で古いブルックス・ブラザースと去年買ったヴァン・ジャケットのいずれもダッフルコートを持ってる。埃だらけで最近履かないけどクラークスのハイカットのワラビーブーツも履こうと思えばまだ履ける。マフラーは去年早稲田大学で買ったスクールマフラーと随分前に西友で買ったスクールマフラー風のニットのものを外出用とふだんづかいで使い分ける。これで大体僕のワードローブ(なんて上等なものがあればの話だけど。)は説明できる。
 ボタンダウンシャツはネイビーのギンガムチェックがデフォルトだ。何年か前にユニクロでえんじのギンガムチェックを見かけたことがあっていいなと思いながら使い勝手がよくなさそうで買わなかった。でも結局その後もあれ買えばよかったかなとちょっと悔やんでいた。今年同じものが出てたまたま2990円が1990円に下がってるときに出くわしたので迷わず買った。ただそれを着てベージュのチノパンを履くと同系色のせいか映えない。どうすればいいか家人に相談すると白のパンツにすればいいんじゃないかと言う。確かに白ならまとまりそうだけど安易に過ぎる気もする。それで思い出したのが一本だけリーヴァイスのブルージーンズを持ってることだった。それはもう随分前に得意先の店舗が入っていた北砂のアリオで買った502で結構高価だったのと特にジーンズに合わせた服を持ってなかったのとでここ十年以上履いてなかった。
 何につけても結構厳格な原理主義者なのでアイヴィールックに関する原則にも厳しい。ジーンズも初めはリーヴァイスの白いものしか履かなかった。ものの本にそう書いてあったからだと思う。ジーンズはリーヴァイスのホワイトジーンズにすべし。まだ大学に入りたての頃だ。その後ブルージーンズにも手を出したけどなんとボタンフロントのリーヴァイス501しか履かなかった。501はリーヴァイスのプロトタイプとも言えるモデルで中でもボタンフロントは初期のものの伝統を受け継いでいる。ボタンフロントとは前のファスナーの部分がボタンで開閉できるようになってるもので直径1.5センチくらいのエンブレムが入った銀色のボタンが四つついている。脱ぎ着に慣れるまでには時間がかかる。でも慣れてしまえば特に不都合はない。ジーンズのファンではないのでヴィンテージものとかにはまるで興味がない。ただジーンズはリーヴァイスの501だけが許されてると思い込んでただけだ。それがなぜ急に502を買おうという気になったのかは今では覚えてない。ただ買ったときに家人と一緒だったことだけはよく覚えている。試着したら家人に褒められたとかそういうことだったのかも知れない。
 自分としては大切にしてる一本だったのでどこにしまってあるかはわかっていた。それを取り出して履いてみるとサイズ的には全然問題ない。高校の頃は太ってたけど浪人でひとり暮らしを始めてから十キロ近く体重が落ちそれ以来二十代の頃からほんのわずかに減る傾向にありこそすれ体重が増えるということはなかった。特に何か運動してる訳でもないので適切な量しか食べてないということなんじゃないかと思う。今は昼は結構食べるけど夜なんかは漬け物に味噌汁に軽くよそったごはんを茶碗に一杯食べるだけだ。酒量も若い頃に比べたら随分減ったしもともと寝酒はアテなしで飲むのでアルコールが体重を増やすこともない。健康的かどうかどうかは別にしてまあ経済的ではある。それでブルージーンズにくだんのえんじのギンガムチェックを合わせるとこれが思った通りよく合う。地元のダイナーのウェイトレスに片思いしてるアメリカの片田舎に住む質素な大学生みたいだ。ある種のピッチャーが正捕手でなく特定のキャッチャーとバッテリーを組みたがるようにえんじのギンガムの登板のときにはボトムはブルージーンズにする方向でこの冬は行こうかと思っている。