指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ちょっとどきどきする。

 中国人の女の子の何(か)さんとバイトでまた一緒のシフトになった。朝イチで冬期講習があるのでいつもより遅れて行ってホワイトボードでその日のスケジュールを確認してると彼女が例の独特な間合いの詰め方ですぐ横に立って同じくスケジュールを確認している。息がかかりそうなほどの近さだ。さすがにちょっとどきどきする。中国の人ってみんなあんな風に人との距離を短めに取るんだろうか。いやでも男の子のバイトにもお客さんの中にも中国人の人がいるけど特に間合いを詰められたという覚えはない。だからそれは何さん特有のものなんじゃないかという気がする。ただ自分は彼女に嫌われてはいないんだろうなとは思う。嫌いだったらそんなに近づきたくないよね。ねひちゃんと仕事の段取りを話していると近づいて来てもの問いたげな目で僕を見つめるのでああ初対面だったかと気づいてお互いを紹介する。その近づいてくる感じもなんだか無防備でかわいい。なるほど。僕は何さんをかわいいと思ってる訳だ。