指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

プール休業。

 バイト先のプールで重大な不具合が見つかり昨日から休業ということになった。壊れたパーツの取り寄せに一ヶ月くらいかかるらしい。バイトも奪われ泳ぐところも奪われるダブルパンチ。今の生活を考えると収入としては致命傷になりかねない。それで急遽新たにバイトを捜してみたけどいろんな理由でどこも勤まりそうにない。大体六十台を喜んで雇おうという奇特な企業なんて清掃か警備関係くらいしかない。それでよくよく考えた結果「九月は働かない」という結論に至った。働かなくては喰っていけないけど八月で疲れ果てたし新しい環境で新しい苦労をするのも正直ぞっとしない。だから不本意ながら足りない分は年金でまかなうことにして九月の仕事は塾だけにする。あと泳ぐ。通えなくはない場所に二ヶ所くらいプールがあるので午前中は泳ぐことをメインに生活を組み立て直す。家人にも承諾を得ている。
 今日はプール利用のために来たお客さんに事情を説明する仕事をやった。昨夜同じ仕事をした自称イケオジのオックスは中年の男性から怒鳴りつけられたらしい。でも午前中の常連の方々はとても穏やかで大変申し訳ございませんと頭を下げるといやいやそういうのは仕方ないことだからみたいな感じでなんならこちらを労うスタンスで帰って行く。しかも常連さん同士でラインやメールのやりとりが活発に行われてるらしくやって来る常連さんの数も極端に少ない。今日は四ヶ月ぶりに来たのに~入れないんですか~とか言う明るめのおばさんとかもいてそれぞれのお客さんの日頃はうかがい知れない素顔も垣間見られたりして僕としてはとても有意義だった。もちろん最大限に気づかいをした上での話だけど。今後何日かは同じ仕事をしにバイトに行きそれからバイトはなくなる。九月分のバイト代はそれだけなので二万円くらいがいいところなのかな。絶望しかけたけど幸い年金がある。少しのんびりして慣れないプールで泳ぎ疲れをとりながら十月を待つ。そう言えば孤高の野良スイマーは今回たった一日で奪われてしまった。新しいゴーグルとかスイムサポーターとか買ったばかりでまだ下ろしてもいないのに本当についてない。あれ?九月に入ってツキが変わるのを待ってたんじゃなかったっけ。