指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

本なんか高くて買えない。

 この前買いたい本があると家人が言うので池袋の三省堂書店へ行き割に長いこと新刊書を見る機会があった。それでカーソン・マッカラーズの作品を村上春樹さんが訳して山本容子さんの版画が収録された新刊を見つけた。確認しなかったけど二百ページくらいに見えるソフトカバーで本体価格二千二百円。申し訳ないけど今の僕にはとても手の出せる金額じゃない。その他にもいろいろ手に取ってみたところ新刊は軒並み高くなってる気がする。特に翻訳はひどい。もっともガルシア=マルケスコーマック・マッカーシーも亡くなってしまった今となっては絶対に買って読みたい海外の作家と言ってもカズオ・イシグロくらいしかいない。だからさほどの実害はほんとはないのかも知れない。でも最近になってがんがん本を読むようになったうちの子なんかがブックオフと大学の図書館とを活用しまくってるのを見るとちょっとかわいそうな気もする。同じ年の頃割にぜいたくに新刊を買ってた記憶があるからだ。昨日も書いたように気に入った本は何度も読み返して今でも愛読してるくらいなので図書館で借りた本で心に残るものがあったらせめて後からでも買って持っていて欲しいと思う。うまく行けばそれが一生心を温めてくれるかも知れないから。それとこんなところでこんなことを言っててもなんの訳にも立たないとは思うんだけど海外には書籍や音楽なんかを含む広く文化を伝える媒体に対して消費税をかけなかったりかけても率を低くしたりしている国があると聞く。それは明らかに文化を享受する人の負担を減らそうという意図のように思われる。この国でもどうしてそういうことをしないのか理解に苦しむ。大体この国は教育や研究といった分野にかけるお金をカットしすぎだと思う。IPS細胞研究の山中伸弥さんの主な仕事が資金集めというのには気の毒を通り越してなんとも言えない恥ずかしさを覚える。世界的な頭脳にはその研究に没頭できるだけの資金を提供すべきだ。誰がって国がだよ。そうして研究のスピードを上げればIPS細胞の実用化は早まりその恩恵に浴する人々の数も増やすことができる。メーカーの口車に乗せられて小学生にひとり一台ずつタブレットを貸与するお金があるならなぜそれをもっと高度な研究に回せないのか。子育ての実感として子供は大きくなればなるほどお金がかかる。小学生なんかにお金をかけてる場合ではない。大学を出て就職しても奨学金の返済のために経済的にマイナスからのスタートを余儀なくされる若い人だってたくさんいる。そういう悲惨な状態を解消することの方がもっとずっと重要ではないか。とは言うものの実は個人的にはもう手遅れなんじゃないかと考えている。文化と教育にお金をかけない国からは優秀な人材はどんどん流出して行く。当然の帰結だ。そうしてこの国は地盤沈下して行く。その勢いは小手先の対策を講じたところでもう止めることはできないところまで来ている気がする。
 身の丈に合わない大きな話はここではしないようにして来た。でも今回は日頃思ってることを思い切って書くことにした。
 最近はほんとに貧乏なので本も図書館で借りてしか読んでないけど図書館というあり方に必ずしも賛成でないのは実作者である家人の思いを聞いて知ってるからだ。図書館に買われたって大した利益にはならない。それでも多くの読者に読まれた方がいいという作者もいるかも知れない。でも家人はそうではないし彼女がそう言うならいつだってその肩を持つ。何かを享受するには正当な対価を支払うべきだと原則的には考えている。だからそうしてきたつもりだ。それを貫き通すなら図書館なんか利用せずにうずたかく積まれた自分の蔵書を読み返すべきなのかも知れない。今から始めてもたぶん全部は読み切れないうちに時間が尽きると思う。
 ちなみに家人が買った本とはこれ。雑誌だ。