チカちゃんとは大学の入学式で出会った。彼の出身が群馬県の前橋市で僕も同じ群馬県だったことと同じ二浪だったこととで意気投合したんじゃないかと思う。大学でいちばん初めに口を利いたクラスメイトだった。だからもう四十年以上のつきあいになる。その間本当にいろいろなことがあった。たとえば一番最初につき合った彼女(これまた大学で語学のクラスが同じでチカちゃんとももちろん顔見知り。)が留学先のケニアでちょっと危ない目に遭ったときコレクトコールで電話をかけてきてその電話代が二十万近くになって困ってたらバイトを紹介してくれたのが彼だった。彼は自分のバイト先に僕を紹介してくれて何年か一緒に働いた。バイト中は同じ大学出身の社員さんが僕らのことを気に入ってくれて夫婦揃って毎晩のように夕飯をご馳走してくれた。夫婦とも結構な酒飲みだったので僕らもご相伴に与った。お子さんがいなくて寂しかったのかも知れない。チカちゃんはその夫婦のうちの近くにアパートを借りていて僕は自転車で三十分ほどのところに住んでいた。だから酔っ払ってはそのおうちの自転車をお借りして帰宅し翌朝はまたおうちまで自転車を返しに行く。そのまま社員さんの運転する社用車でバイト先まで連れてってもらった。好待遇と言えばすごい好待遇だ。ときどきはその社員さんのおうちを辞した後でふたりで飲み直したりすることもあった。彼にはちょっと説明しがたい不思議な言語感覚があり残念ながら同じ感覚が僕にも共有されていた。それで周囲の人が誰も理解できない愚にもつかない話をしてはふたりだけで大笑いした。今思い出してもあれは楽しかったな。それから僕が下宿でやってた私塾を手伝ってもらったりもした。そのときはきちんと時給も支払った。彼が大学を卒業してしまうと僕はひとりでバイトを続け結局その会社に就職した。その数年後に最初の彼女とはお別れしほどなくその会社の上司の女性とおつき合いすることになった。チカちゃんが勤めていた会社を辞めて同じ会社に入ってきたのはさらに何年か後のことだと思う。ところで彼にはちょっとルーズと言うかいい加減なところがあって大学の頃から女の子たちにはウケが悪かった。チカちゃんとのつきあいの方が僕とのつきあいより長いはずの二番目の彼女もその例外ではなかった。それから彼にはアルコールが入るとキャバクラに行きたがるという性癖があった。僕も二回か三回同行したことがあるけどこれが更に彼女の不興を買った。正直僕としてはなんの下心もなかったし特に話題が豊富でもない女の子と差し向かいで話しても気詰まりなだけだった。だから悪びれずにそのことを彼女に話した。でももちろん彼女が嫌がるならそんなところには行かない。その他仕事のやり方とかでもいろいろあってそのうちに僕はチカちゃんを避けるようになった。彼がそんな僕をどう見ていたかはわからない。まあ女を取るんなら仕方ないよなといったところだったかも知れない。僕がその彼女とお別れしたとき彼がまだ同じ会社にいたかどうかは覚えてない。とにかく数年後彼はまた別の会社に移って行った。たぶんそれ以来会ってないんじゃないかと思う。二番目の彼女とお別れした時点で彼を避ける根拠は実はなくなっていたんだけどそれ以降もなんとなく避けてたのは彼に対して不当なことをしてたかも知れない。以上がチカちゃんの話。
pechikaさんの話は結局会う時間と場所が決まった。今日はスーパームーンということだったけど何度か見上げた月は暈をかぶっていた。それも一興だね。