指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

懸命に生きてる。

 この作品の中では誰もが自分なりの問題を抱えながらそこから目をそらさずにひたすら懸命に生きている。彼らのそのひたむきさが作品全体にどことなく漂う哀しみの正体のように思われる。僕はこの作者の描くこういう哀しみがとても好きだ。同じような哀しみを描くことのできる人としてはこの作者の他に高橋源一郎さんくらいしか思いつかない。もちろんおふたりともその作品に込められるものは哀しみばかりではない。たとえばこの作品で言えば世界を解釈するのにどういう方法が適切かという問題意識が根底にある。でもあまりに自分の方法に拘泥しすぎて病態に進む様までが描かれてしまう。そのとき世界を解釈する方法という問題意識から作品全体を覆うそこはかとない哀しみが産み落とされる。哀しいのは病態に陥ることではない。病態にまで突き進まずにはいられない誠実で切実な生き方がなんだかとても哀しいのだ。そしてその哀しみはもしかしたら僕たちみんなが抱えて行かなければならないものなのかも知れない。そのことに思い至ったとききっと僕たちはこの作品の登場人物たちが少しでも幸せになってくれることを願い始めるだろう。そして彼らは実際に幸せな結末を迎えているように読める。少なくとも僕にはそう思える。ごまかさず逃げ出さずつらくても誠実に懸命に生きること。幸せになるためにはそれ以外の方法なんてないよね。作者のそんな声が聞こえて来る気がする。なんていう感想をきっかけにこの本を開いた方はちょっと驚かれるかも知れない。ホストと元ソープ嬢のお話だから。でも僕の言ってることはそれほど見当違いでもないんじゃないかと思う。
 今日でもう一週間泳ぐのを休んでる。朝起きても疲れ切っててとりあえず仕事に出かけるだけで精いっぱいだからだ。なんとかしなければならないとは思ってるんだけど。