バイト仲間のグレートマザーまーさんはとても社交的で仲良くなったお客さんをたまにバイトに勧誘することがある。そうして入って来た三十代半ばの男の人は何しろ泳ぎがうまくてプールで行われるスイミングレッスンの講師も今務めている。名前を付けておこう。タケさんでいいかな。彼が来てからもう一年近くになると思う。その人となりについては必要になったら詳しく触れる機会があるかも知れない。今はただそういう人がいるというだけに留めておく。今日水中点検に入って出て来たらクロールが随分上達したとそのタケさんに言われた。腕のストロークの入射角がよくなってほとんど泡を立てずに指先を水中に沈めることができており見ててああきれいなストロークだなと思ったということだった。長距離を毎日泳ぐ人は誰に教わらなくとも合理的な泳ぎ方に近づいて行くということがあるらしい。正直あれだけフォームのきれいな人からそういう風に言われてすごくうれしかった。思いがけないグリスマスギフトをもらった気がした。ただ水中点検のとき自分なりには普段と違ってなるべくきれいに見えるような泳ぎ方を心がけてる。だってめちゃくちゃなフォームで泳ぐ人がプールの監視してたらいざというときほんとに助けてもらえるのかなとお客さんが不安になるかも知れないじゃないですか。きれいなフォームの人の方が信頼できそうな気がするでしょ。という訳で水中点検のときは少しだけ丁寧な泳ぎ方に変えてる。それで疑問に思ったのはじゃあそのお客さんに見せる用のフォームで千メートル泳いだらどうなるんだろうということだ。その方が行く行くタイムが縮まる可能性が高いんじゃないだろうか。まあ今のところは単なる思いつきに過ぎないんだけれども。
昨日の今日なのでスイムは休んだ。でも寒さは一切感じることなく水中点検の後は体がぽかぽかして気持ちよかった。今日はまーさんと今年最後の一緒のシフトだったので帰り際に一年を締めくくる挨拶を丁寧にした。実は仕事納めの翌日に研修が予定されてて参加すると年内もう一回まーさんに会えることになってた。でも講師が自称イケオジのオックスということがわかったので急遽辞退することにした。オックスからはこの前までしばらくの間無視されてたんだけど(理由はまったくわからない。)少しも気にかけずにこちらからは普通に接してたら最近また話をするようになって表面上それなりにうまくやってる。でもこの人に何かを教わるなんて真っ平ごめんだ。ひとりで戦うことを選んだ身にとっては党派を恃みにする奴なんていつだって最大の敵だ。もちろん表立ってことを構えたりはしないけどね。大人だからね。