去年のホワイトデイにプールのお客さんのワミさんという年配の女性に塾の住所と僕の名前と誕生日を記したメモをバレンタインのお返しのお菓子と一緒に手渡したことには前にも触れたと思う。それはワミさん自身に頼まれたからだった。郵便局の配達日指定のサービスを使って来年の誕生日に僕に葉書が届くようにしたいと彼女は言った。ほんとは自宅の住所が知りたそうだったけどそれはちょっといやだったので塾の住所を教えた。彼女の言葉通りだったら昨日がその日のはずだった。でも結局葉書は届かなかった。去年の夏以降少なくとも一年以上彼女はプールに姿を見せてなくて僕は僕なりに心配している。その葉書が届けば彼女の住所もわかるだろうし葉書とか手紙とか送ってみるつもりもあった。でもその道も絶たれてしまった。彼女はそのプールで行われてるスイミングスクールに入ってたので事務局には彼女の個人情報が残されていることだろう。でもこのご時世で赤の他人の僕にそんなもの教えてくれる訳もない。スクールのお仲間に尋ねる手もあるかも知れないけどなんでそんなこと詮索してるんだと言われるとちょっと返す言葉がないので思い切れないでいる。お元気だったらいいなあと思いはそれだけだ。そんな風にいつの間にか来なくなってしまうお客さんというのもいる。ひとりは亡くなったことがわかっててもうひとり入院中だということがわかってる人もいる。でも大部分はいつからかふっつり姿を現さなくなってその後の消息はわからないままだ。そしてグレートマザーまーさんとかキャリアの長い人とそう言えばという感じであの人どうしたんでしょうねと話題に上る。でも僕らにしてももう忘れてしまってるお客さんの方がずっと多いかも知れない。ワミさんは僕にとても個人的な好意を寄せてくれてた。それでよく覚えてる訳だ。でも彼女と再び会える日が来るかと言うと現状相当難しいんだろうな。そんな気がする。