指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

花冷え。

結婚してからずっと花見は休暇をとって井の頭公園に行くことにしていた。有休は掃いて捨てるほどあるし混み合った土日ではなくウィークデイに行くのがささやかなぜいたくだった。それでもまあ結構混んでいるんだけど。
今年は仕事が忙しくてたまたまこの時期に有休が取りづらく、また他にちょっと理由もあって井の頭公園は断念した。それで土曜日の今日、近くの桜をはしごしてから食べ物とビールでも買って外で昼食にしようかと計画していた。でも花冷えの日になってしまった。それで昼食は見合わせ散歩がてら花見をするだけに留めた。子供にまた風邪をひかせる訳には行かない。
歩いて行ける割と有名な桜の名所は天気や気温とはまるで無関係にとてもにぎわっていた。地面にはビニールシートや段ボールが場所取りのために広げられ、缶ビールや酒瓶が傾けられていた。散策する人も多かった。桜はほぼ満開で量感は申し分なかった。ゆっくりと歩いた。子供は桜をきれいだと思うだろうか。桜がきれいだという物語に、僕はもっと大人になってからなじんだような気がする。
もう一箇所ある比較的地味な桜の見所へも足を運んだ。個人的にものすごく気に入った枝振りの、背の高い桜があるからだ。でもその桜の木はいつの間にか切り倒され切り株だけが残っていた。週に一度は訪れる遠い場所もあれば、歩いて五分なのに年に一回しか行かない場所もある。そんなことを考えた。