指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

桜。

午前中歩いて子供と出かけた。昨日今日あたりは風もなく雨も降らず近くの桜はほぼ満開の花を風に揺らしていた。ちょっとした桜の名所を通りかかったときに花の方に子供の注意を促した。でも子供はほとんど関心を示さなかった。そうだろうなとは思っていた。桜をありがたがるようになったのは僕だって随分大人になってからだ。あと何度桜の春を迎えられるだろうとか、そういうあまり上等とも思えない物語が桜の季節を特別なものにさせている。あるいはさせているに過ぎない。そういう物語を子供は知らない。この場合、よりいいのは物語を知っているより知らないことなんじゃないかというのがここで言いたいことだ。自分より子供の方が優れているんじゃないかという気がどうしてもして来る。そしてその根拠をはっきり示すことは今のところできない。もっともそれとはまったく別に、こちらはこちらで毎年桜の花をありがたがっている訳だけど。