指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

きちんと生活。

ポトスライムの舟

ポトスライムの舟

これは本当におもしろかった。焦点が生活にぴったりと合っている。生活の中の一見卑俗な事柄を描いているのに全然卑俗な感じがしない。収録作二作ともそうだった。生活なんて要するに卑俗な事柄の連続でしょ、みたいな開き直りではなくなんて言うか無理の無い必然性として卑俗なディテールが捉えられていると言えばいいか。観念ではなく実体を持った生活感が描かれていると言えばいいか。とにかくひとりの若い女性の暮らしが何も足されず何も引かれずに物語になりおおせている感じがした。初めて読む文体だという気がした。
二作目の方が劇的な展開で背筋が寒くなったけど、芥川賞を受賞した表題作の方が抑えが効いていてより良いと思った。この作者の作品は他のも読んでみたい。