指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

新しい「あの人」像。

DJヒロヒト 作者:高橋 源一郎 新潮社 Amazon 様々な人が出て来る。文学者。兵士としての文学者。兵士。戦争の片棒を担がされそうな研究者たち。その研究所で育てられている現地人とニッポン人の混血の男の子。南方に送られ戦後帰国する元慰安婦。反逆罪で捕…

ギケイキ3。

ギケイキ3: 不滅の滅び 作者:町田 康 河出書房新社 Amazon 今このブログを検索すると「ギケイキ」の一作目を読み終えたのが2016年ということになってる。もうちょっとで十年経ってしまう。「ギケイキ2」については記述がないみたいだ。でも義経が静御前と別…

諏訪哲史さんの新刊を読み終える。

昏色の都 作者:諏訪哲史 国書刊行会 Amazon 作者は何かをとことんまで突き詰めずにはいられないひと言で言うなら凝り性な人なんだろうなという気がする。思い起こせば「アサッテの人」の語り手のおじさんの造形からしてそうだった。本書でもその凝り具合はい…

諏訪哲史さんの新刊を読み始めた。

ご存じない方にちょっとだけご説明しておくと諏訪哲史さんは2007年に群像新人賞と芥川賞のW受賞を果たした「アサッテの人」でデビューされた。それより前に当時の仕事の関係で諏訪さんの奥様を存じ上げていて旦那様が小説を書いてるということも耳にしていた…

たどり着けないフランツ・カフカ。

カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫) 作者:フランツ・カフカ 新潮社 Amazon いつかはその作品を全部読破したいと若い頃から望んでいて果たしてない作家というのがいる。どなたにでもいるんじゃないかと思う。…

たぶんもう少し磨き上げられるべきお話だった気がする。

出会いはいつも八月 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 新潮社 Amazon ガブリエル・ガルシア=マルケスの未完の遺作。一応お話としては終わってるように見える。でもたぶんもう少し手間暇かけて磨き上げられるべきお話だった気がする。分量としては似てる…

病者の光学。

世界音痴 作者:穂村 弘 小学館 Amazon 病んでいたり弱っていたりする人特有の視線が常人には気づけないことに気づかせてくれることを称してニーチェが「病者の光学」と言ったと記憶してる。(この前ソシュールの「コノテーション」という概念を完全に履き違…

またパスタを食べに行く。

シャーロック・ホームズの凱旋 作者:森見登美彦 中央公論新社 Amazon 子供が一日出かけていて春期講習は午前中でおしまいなのでお昼はこの前食べに行ったイタリアンでパスタにしようと決まる。開店と同時にお店に入ったらあれよあれよという間に満席になる。…

それほどおもしろくなかった。

100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集 作者:福井県立図書館 講談社 Amazon うーんとブックオフで少しだけ立ち読みしたときにはすごくおもしろく感じられたんだけど通しで読むとそれほどでもなかった。これはやっぱサイトで読んだ方がずっとおもしろい。…

メタレベルでのコントロール。

ホサナ (講談社文庫) 作者:町田康 講談社 Amazon この作品を読みながらしきりにメタレベルという言葉が頭に浮かんできた。物語としてはこの作者の長編のいくつか同様にかなり荒唐無稽な訳だ。でもだからと言って破綻してる印象にはならない。最初から最後ま…

星乃珈琲店に行く。

中国行きのスロウ・ボート (単行本) 作者:村上 春樹 中央公論新社 Amazon 家人がフレンチトーストが食べたいと言うので池袋の星乃珈琲店へ行く。家人はフレンチトーストにオレンジジュース。僕はハムチーズトーストにオレンジジュース。珈琲店と言ってるのに…

「からかい上手の高木さん」が終わってしまった。

からかい上手の高木さん(20) (ゲッサン少年サンデーコミックス) 作者:山本崇一朗 小学館 Amazon 泣くかも知れないから塾では読まないようにしてた。それとたぶんほんとに終わってしまうのが嫌だというのもあった。だから高木さんの最終巻を手にしながら…

一流シェフの手になる家庭料理としてのエッセイ。

空の冒険 (集英社文庫) 作者:吉田修一 集英社 Amazon 短編小説&エッセイ集。これもブックオフで随分前に買っておいた。ANAグループの機内誌「翼の王国」の人気連載ということで短編小説が十二編エッセイが十一編収録されている。機内誌に連載というだけあっ…

以前読んでた作家の作品で未読のものを読んでいる。

キャンセルされた街の案内 (新潮文庫) 作者:吉田 修一 新潮社 Amazon 以前読んでた作家の作品で未読のものを読んでいる。たとえば平野啓一郎さんの作品。芥川賞を獲られた「日蝕」(字が少し違う気がするけど気のせいかな。)は確か単行本の出た日に買って読…

読書本二冊。

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文芸文庫) 作者:平野 啓一郎 PHP研究所 Amazon 小説の読み方 (PHP文芸文庫) 作者:平野 啓一郎 PHP研究所 Amazon いずれも平野啓一郎さんのご著書で後者は前者の続編という位置づけでいいんだろうと思う。前者は主…

山田太一さんが亡くなった。

異人たちとの夏 (新潮文庫) 作者:太一, 山田 新潮社 Amazon 山田太一さんが亡くなった。個人的な体験で言うと「岸辺のアルバム」のときはちょっとおさなすぎ「ふぞろいの林檎たち」の再放送くらいで年齢的にはぴったり合ってた実感がある。制作年とかはウィ…

ほんの、ほんの一瞬だけれど、ずっと、永遠にこうしていてもいい気がした。

プール葬 作者:新井千裕 中央公論新社 Amazon 新井千裕さんが群像新人賞を受賞されたとき文体としては村上春樹さんの強い影響下にあると感じたのは僕だけじゃなかったんじゃないだろうか。でも言うまでもないことだけど村上さんの影響下にある部分よりもその…

もうひとつの「スタークロスト・ラヴァーズ」。

マチネの終わりに 作者:平野 啓一郎 毎日新聞出版 Amazon 「スタークロスト・ラヴァーズ」という曲名が薄幸な恋人たちという意味でロミオとジュリエットのことを指すというのは村上春樹さんの「国境の南、太陽の西」で知った。この小説も正にスタークロスト…

入手してから少し時の経った本を読んでいる。

遠い声、遠い部屋 作者:トルーマン・カポーティ 新潮社 Amazon この前のイタロ・カルヴィーノの「魔法の庭」その前のコーマック・マッカーシーの「果樹園の守り手」と手に入れてから少し時の経った本を読んでいる。(「果樹園の守り手」は図書館で借りたもの…

おじさんが読む「Millie's Marvellous Hat」。

お題「大好きな絵本は何ですか?」 Millie's Marvellous Hat 作者:Kitamura, Satoshi Andersen Press Amazon 一時期英米の絵本にはまってまとめて読んでたことがある。この本の和訳は「ミリーのすてきなぼうし」というタイトルで小二だったか小三だったかの…

カルヴィーノのリアリズム。

魔法の庭 作者:カルヴィーノ,イタロ,イタロ・カルヴィーノ 晶文社 Amazon イタロ・カルヴィーノは寓話もしくはファンタジックな作風が本領の作家だという思い込みがある。でもこの初期短編集を読むと文体はリアリズムに近い。これらの作品群と同時期に書かれ…

「果樹園の守り手」。

果樹園の守り手 作者:コーマック・マッカーシー 春風社 Amazon コーマック・マッカーシーのデビュー作。一読してすらすら理解できるというタイプの小説ではない。場面はめまぐるしく入れ替わるし登場人物は誰に肩入れしていいかわからないし豊富な自然描写は…

「綿の国星」を読んでいる。

綿の国星 2 (花とゆめCOMICS) 作者:大島 弓子 白泉社 Amazon 花とゆめコミックス版の「綿の国星」第二巻を読んだ。「たそがれは逢魔の時間」が収録されている。これも若い頃何度読み返したかわからない作品のひとつだ。今読み返すと少女娼婦である邪夢(じゃ…

好きな女の子の不在に耐えるということ。

街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 女の子を好きになったら彼女が不在である時間に耐えなければならない。それが長いものであれ短いものであれ。個人的なことを言うなら海外に留学した彼女を待った経験がある。長距離恋愛で次にいつ会えるかわ…

初グリシャム。

「グレート・ギャツビー」を追え (中公文庫 む 4-13) 作者:ジョン・グリシャム 中央公論新社 Amazon ジョン・グリシャムの名前はもちろん耳にしてはいたけど作品を読んだことはなかったしもしも村上春樹さんが訳されたのでなければ一生読まなかったかも知れ…

クララが書いている場所とはどこか。

クララとお日さま 作者:カズオ イシグロ 早川書房 Amazon 遅まきながらカズオ・イシグロの「クララとお日さま」を読んだ。すごく心動かされる作品だった。少なくともしばらくの間は折りにつけクララのことを思い出すに違いない。ラストシーンはあまりにかわ…

買わなくてもよかったんだけど買ってよかった。

本当の翻訳の話をしよう 増補版 (新潮文庫) 作者:村上 春樹,柴田 元幸 新潮社 Amazon このブログで確認すると村上柴田翻訳堂をまとめて読んだのは2018年の夏前のことらしい。「本当の翻訳の話をしよう」の単行本が出たのが2019年の9月ということでこれは出た…

ちょっと困った。

からかい上手の(元)高木さん(2)【期間限定 無料お試し版】 (ゲッサン少年サンデーコミックス) 作者:稲葉光史,山本崇一朗 小学館 Amazon 「からかい上手の(元)高木さん」はブックオフに一巻がなかったので二巻目から読み始めたんだけどちょっと困った…

「I know it.」。

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし 作者:レオ・レオニ 好学社 Amazon 「Frederick」のラストで他のネズミたちから君は詩人だねと言われたFrederickはほほを赤らめてお辞儀をした後恥ずかしげに「I know it.」と答える。普通に訳せば「知ってる…

とにかく読み終えた。

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世 作者:山本 義隆 みすず書房 Amazon 読むのは速くなくて普通の単行本で小説の場合一時間に40ページくらい。これは年齢に関係なく若い頃から大体同じだ。難しい本になると当然スピードが落ちる。この本の場合は一時間に20ペー…