本
私の文学史: なぜ俺はこんな人間になったのか? (NHK出版新書 681) 作者:町田 康 NHK出版 Amazon この本の中で町田さんが本音の言葉と建前の言葉という言い方をしてるものが僕には自分の言葉と東京の言葉と置き換えられる気がした。町田さんもうすうすそう思…
猫のエルは (講談社文庫 ま 46-18) 作者:町田 康 講談社 Amazon 町田康さんの作品で未読のものをまとめて読んでおきたいとある日突然思い立った。それで図書館にリクエストを出したら七冊としばらく前に予約を入れてやっと番が回ってきた別の一冊の計八冊が…
Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫) 作者:レイモンド カーヴァー 中央公論新社 Amazon レイモンド・カーヴァーの作品は長い間近寄りがたいものに見えていた。初めて彼の作品を手にしたのはおそらく荻窪のタウンセブンかルミネに入って…
成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ 作者:宮島未奈 新潮社 Amazon 国語の高校入試問題や模試の問題を解いてるとこういう小説ってどんな人が書いててどんな人が読んでるんだろうと思わされる作品というのが結構ある。作者名を見ると知ってる場合もあれ…
入門 山頭火 作者:町田康 春陽堂書店 Amazon 物語を味方につけると世界像の理解がすごくうまく行くようになるんじゃないかと日頃から個人的には考えている。世界像と言ったのは苦し紛れで要するに我々を取り囲むこの世界のすべてのことを指している。自然で…
くるぶし 作者:町田康 COTOGOTOBOOKS Amazon もう正直に自白すると現代短歌がわからない。現代詩も俳句も同様かも知れない。イメージとしては海に立つ波涛の小さな先端だけを切り取ってそれを並べることによって海全体を表現するみたいなことが行われてるん…
DJヒロヒト 作者:高橋 源一郎 新潮社 Amazon 様々な人が出て来る。文学者。兵士としての文学者。兵士。戦争の片棒を担がされそうな研究者たち。その研究所で育てられている現地人とニッポン人の混血の男の子。南方に送られ戦後帰国する元慰安婦。反逆罪で捕…
ギケイキ3: 不滅の滅び 作者:町田 康 河出書房新社 Amazon 今このブログを検索すると「ギケイキ」の一作目を読み終えたのが2016年ということになってる。もうちょっとで十年経ってしまう。「ギケイキ2」については記述がないみたいだ。でも義経が静御前と別…
昏色の都 作者:諏訪哲史 国書刊行会 Amazon 作者は何かをとことんまで突き詰めずにはいられないひと言で言うなら凝り性な人なんだろうなという気がする。思い起こせば「アサッテの人」の語り手のおじさんの造形からしてそうだった。本書でもその凝り具合はい…
ご存じない方にちょっとだけご説明しておくと諏訪哲史さんは2007年に群像新人賞と芥川賞のW受賞を果たした「アサッテの人」でデビューされた。それより前に当時の仕事の関係で諏訪さんの奥様を存じ上げていて旦那様が小説を書いてるということも耳にしていた…
カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫) 作者:フランツ・カフカ 新潮社 Amazon いつかはその作品を全部読破したいと若い頃から望んでいて果たしてない作家というのがいる。どなたにでもいるんじゃないかと思う。…
出会いはいつも八月 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 新潮社 Amazon ガブリエル・ガルシア=マルケスの未完の遺作。一応お話としては終わってるように見える。でもたぶんもう少し手間暇かけて磨き上げられるべきお話だった気がする。分量としては似てる…
世界音痴 作者:穂村 弘 小学館 Amazon 病んでいたり弱っていたりする人特有の視線が常人には気づけないことに気づかせてくれることを称してニーチェが「病者の光学」と言ったと記憶してる。(この前ソシュールの「コノテーション」という概念を完全に履き違…
シャーロック・ホームズの凱旋 作者:森見登美彦 中央公論新社 Amazon 子供が一日出かけていて春期講習は午前中でおしまいなのでお昼はこの前食べに行ったイタリアンでパスタにしようと決まる。開店と同時にお店に入ったらあれよあれよという間に満席になる。…
100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集 作者:福井県立図書館 講談社 Amazon うーんとブックオフで少しだけ立ち読みしたときにはすごくおもしろく感じられたんだけど通しで読むとそれほどでもなかった。これはやっぱサイトで読んだ方がずっとおもしろい。…
ホサナ (講談社文庫) 作者:町田康 講談社 Amazon この作品を読みながらしきりにメタレベルという言葉が頭に浮かんできた。物語としてはこの作者の長編のいくつか同様にかなり荒唐無稽な訳だ。でもだからと言って破綻してる印象にはならない。最初から最後ま…
中国行きのスロウ・ボート (単行本) 作者:村上 春樹 中央公論新社 Amazon 家人がフレンチトーストが食べたいと言うので池袋の星乃珈琲店へ行く。家人はフレンチトーストにオレンジジュース。僕はハムチーズトーストにオレンジジュース。珈琲店と言ってるのに…
からかい上手の高木さん(20) (ゲッサン少年サンデーコミックス) 作者:山本崇一朗 小学館 Amazon 泣くかも知れないから塾では読まないようにしてた。それとたぶんほんとに終わってしまうのが嫌だというのもあった。だから高木さんの最終巻を手にしながら…
空の冒険 (集英社文庫) 作者:吉田修一 集英社 Amazon 短編小説&エッセイ集。これもブックオフで随分前に買っておいた。ANAグループの機内誌「翼の王国」の人気連載ということで短編小説が十二編エッセイが十一編収録されている。機内誌に連載というだけあっ…
キャンセルされた街の案内 (新潮文庫) 作者:吉田 修一 新潮社 Amazon 以前読んでた作家の作品で未読のものを読んでいる。たとえば平野啓一郎さんの作品。芥川賞を獲られた「日蝕」(字が少し違う気がするけど気のせいかな。)は確か単行本の出た日に買って読…
本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文芸文庫) 作者:平野 啓一郎 PHP研究所 Amazon 小説の読み方 (PHP文芸文庫) 作者:平野 啓一郎 PHP研究所 Amazon いずれも平野啓一郎さんのご著書で後者は前者の続編という位置づけでいいんだろうと思う。前者は主…
異人たちとの夏 (新潮文庫) 作者:太一, 山田 新潮社 Amazon 山田太一さんが亡くなった。個人的な体験で言うと「岸辺のアルバム」のときはちょっとおさなすぎ「ふぞろいの林檎たち」の再放送くらいで年齢的にはぴったり合ってた実感がある。制作年とかはウィ…
プール葬 作者:新井千裕 中央公論新社 Amazon 新井千裕さんが群像新人賞を受賞されたとき文体としては村上春樹さんの強い影響下にあると感じたのは僕だけじゃなかったんじゃないだろうか。でも言うまでもないことだけど村上さんの影響下にある部分よりもその…
マチネの終わりに 作者:平野 啓一郎 毎日新聞出版 Amazon 「スタークロスト・ラヴァーズ」という曲名が薄幸な恋人たちという意味でロミオとジュリエットのことを指すというのは村上春樹さんの「国境の南、太陽の西」で知った。この小説も正にスタークロスト…
遠い声、遠い部屋 作者:トルーマン・カポーティ 新潮社 Amazon この前のイタロ・カルヴィーノの「魔法の庭」その前のコーマック・マッカーシーの「果樹園の守り手」と手に入れてから少し時の経った本を読んでいる。(「果樹園の守り手」は図書館で借りたもの…
お題「大好きな絵本は何ですか?」 Millie's Marvellous Hat 作者:Kitamura, Satoshi Andersen Press Amazon 一時期英米の絵本にはまってまとめて読んでたことがある。この本の和訳は「ミリーのすてきなぼうし」というタイトルで小二だったか小三だったかの…
魔法の庭 作者:カルヴィーノ,イタロ,イタロ・カルヴィーノ 晶文社 Amazon イタロ・カルヴィーノは寓話もしくはファンタジックな作風が本領の作家だという思い込みがある。でもこの初期短編集を読むと文体はリアリズムに近い。これらの作品群と同時期に書かれ…
果樹園の守り手 作者:コーマック・マッカーシー 春風社 Amazon コーマック・マッカーシーのデビュー作。一読してすらすら理解できるというタイプの小説ではない。場面はめまぐるしく入れ替わるし登場人物は誰に肩入れしていいかわからないし豊富な自然描写は…
綿の国星 2 (花とゆめCOMICS) 作者:大島 弓子 白泉社 Amazon 花とゆめコミックス版の「綿の国星」第二巻を読んだ。「たそがれは逢魔の時間」が収録されている。これも若い頃何度読み返したかわからない作品のひとつだ。今読み返すと少女娼婦である邪夢(じゃ…
街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 女の子を好きになったら彼女が不在である時間に耐えなければならない。それが長いものであれ短いものであれ。個人的なことを言うなら海外に留学した彼女を待った経験がある。長距離恋愛で次にいつ会えるかわ…