指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

もうひとつの「スタークロスト・ラヴァーズ」。

マチネの終わりに 作者:平野 啓一郎 毎日新聞出版 Amazon 「スタークロスト・ラヴァーズ」という曲名が薄幸な恋人たちという意味でロミオとジュリエットのことを指すというのは村上春樹さんの「国境の南、太陽の西」で知った。この小説も正にスタークロスト…

入手してから少し時の経った本を読んでいる。

遠い声、遠い部屋 作者:トルーマン・カポーティ 新潮社 Amazon この前のイタロ・カルヴィーノの「魔法の庭」その前のコーマック・マッカーシーの「果樹園の守り手」と手に入れてから少し時の経った本を読んでいる。(「果樹園の守り手」は図書館で借りたもの…

おじさんが読む「Millie's Marvellous Hat」。

お題「大好きな絵本は何ですか?」 Millie's Marvellous Hat 作者:Kitamura, Satoshi Andersen Press Amazon 一時期英米の絵本にはまってまとめて読んでたことがある。この本の和訳は「ミリーのすてきなぼうし」というタイトルで小二だったか小三だったかの…

カルヴィーノのリアリズム。

魔法の庭 作者:カルヴィーノ,イタロ,イタロ・カルヴィーノ 晶文社 Amazon イタロ・カルヴィーノは寓話もしくはファンタジックな作風が本領の作家だという思い込みがある。でもこの初期短編集を読むと文体はリアリズムに近い。これらの作品群と同時期に書かれ…

「果樹園の守り手」。

果樹園の守り手 作者:コーマック・マッカーシー 春風社 Amazon コーマック・マッカーシーのデビュー作。一読してすらすら理解できるというタイプの小説ではない。場面はめまぐるしく入れ替わるし登場人物は誰に肩入れしていいかわからないし豊富な自然描写は…

「綿の国星」を読んでいる。

綿の国星 2 (花とゆめCOMICS) 作者:大島 弓子 白泉社 Amazon 花とゆめコミックス版の「綿の国星」第二巻を読んだ。「たそがれは逢魔の時間」が収録されている。これも若い頃何度読み返したかわからない作品のひとつだ。今読み返すと少女娼婦である邪夢(じゃ…

好きな女の子の不在に耐えるということ。

街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 女の子を好きになったら彼女が不在である時間に耐えなければならない。それが長いものであれ短いものであれ。個人的なことを言うなら海外に留学した彼女を待った経験がある。長距離恋愛で次にいつ会えるかわ…

初グリシャム。

「グレート・ギャツビー」を追え (中公文庫 む 4-13) 作者:ジョン・グリシャム 中央公論新社 Amazon ジョン・グリシャムの名前はもちろん耳にしてはいたけど作品を読んだことはなかったしもしも村上春樹さんが訳されたのでなければ一生読まなかったかも知れ…

クララが書いている場所とはどこか。

クララとお日さま 作者:カズオ イシグロ 早川書房 Amazon 遅まきながらカズオ・イシグロの「クララとお日さま」を読んだ。すごく心動かされる作品だった。少なくともしばらくの間は折りにつけクララのことを思い出すに違いない。ラストシーンはあまりにかわ…

買わなくてもよかったんだけど買ってよかった。

本当の翻訳の話をしよう 増補版 (新潮文庫) 作者:村上 春樹,柴田 元幸 新潮社 Amazon このブログで確認すると村上柴田翻訳堂をまとめて読んだのは2018年の夏前のことらしい。「本当の翻訳の話をしよう」の単行本が出たのが2019年の9月ということでこれは出た…

ちょっと困った。

からかい上手の(元)高木さん(2)【期間限定 無料お試し版】 (ゲッサン少年サンデーコミックス) 作者:稲葉光史,山本崇一朗 小学館 Amazon 「からかい上手の(元)高木さん」はブックオフに一巻がなかったので二巻目から読み始めたんだけどちょっと困った…

「I know it.」。

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし 作者:レオ・レオニ 好学社 Amazon 「Frederick」のラストで他のネズミたちから君は詩人だねと言われたFrederickはほほを赤らめてお辞儀をした後恥ずかしげに「I know it.」と答える。普通に訳せば「知ってる…

とにかく読み終えた。

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世 作者:山本 義隆 みすず書房 Amazon 読むのは速くなくて普通の単行本で小説の場合一時間に40ページくらい。これは年齢に関係なく若い頃から大体同じだ。難しい本になると当然スピードが落ちる。この本の場合は一時間に20ペー…

山本義隆さん二冊目。

福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと 作者:山本 義隆 みすず書房 Amazon 福島の原発事故は想定外の事故とは言えない。なぜならそもそも原発とは未完成な技術に過ぎず事故はある意味で必然的について回るものだからだ。それはどうしてなのか。…

リハビリ。

リニア中央新幹線をめぐって――原発事故とコロナ・パンデミックから見直す 作者:山本 義隆 みすず書房 Amazon そろそろ本を読まなきゃと漠然と思ったんだけどどんなジャンルにせよいきなり本格的なものだと途中で挫折しそうなくらい長い間読書と離れていた気…

急がなければ。

ダンとアンヌとウルトラセブン ~森次晃嗣・ひし美ゆり子 2人が語る見どころガイド~ 作者:森次晃嗣,ひし美ゆり子 小学館 Amazon 久々に図書館。リクエストしてから順番待ちで来るまで三ヶ月近くかかった。本当に懐かしさを呼び起こされる本だ。演者の述懐…

こういう文章を読むのが本当に好きだ。

古くて素敵なクラシック・レコードたち (文春e-book) 作者:村上 春樹 文藝春秋 Amazon 村上さんのレコードを巡るエッセイ集。小説は襟を正して読む必要がある気がするけどこういう文章は気楽にでも読む気満々で読んですごく気持ちいい。ちょっと高かったけど…

ブラック・ジャックの恋人。

ピノコ哀しや―手塚治虫『ブラック・ジャック』論 作者:俊介, 芹沢 発売日: 2020/02/01 メディア: 単行本 僕が持ってる「ブラック・ジャック」は秋田書店から出ている文庫版で随分前にどこかにしまって以来読んでない。ただ確か全巻揃ってたはずだ。これは同…

また思い出話、あるいは「Seven and the Ragged Tiger」。

あどりぶシネ倶楽部 (ビッグコミックス) 作者:細野不二彦 発売日: 2014/12/15 メディア: Kindle版 浪人してた下宿では週にひとり一冊ずつ漫画雑誌を買って計六誌か七誌をみんなで回し読みしていた。自分で書いててなんかすごく楽しそうだ。その中の一冊に「…

夜と少女。

心は孤独な狩人 [ カーソン・マッカラーズ ]価格: 2750 円楽天で詳細を見る 今回読み返した村上さんの多分短篇の中に人の話に耳を傾けながら自殺する唖の青年を描いた小説が出てきた記憶があるんだけど正にこれがその作品だった。夜と少女の組み合わせという…

懐かしの一九八〇年代。

1987年初版なのにこの副題となっているのには作者の実感が反映されている旨本文に記載があるけど今となっては本当に懐かしの1980年代ということになる。僕ももう結構年なので取り上げられてる人物のうち古いジャズ・ミュージシャンを除けば大体誰だか知って…

主張が強い気がする。

村上朝日堂 はいほー! (新潮文庫) 作者:春樹, 村上 発売日: 1992/05/29 メディア: 文庫 エッセイ集は短篇集よりさらに読むのに時間がかからないみたいだ。 「はいほー!」というお気楽な名前がついてる割りにはこれまででいちばん筆者の主張が強いように感…

思い合わせる楽しみ。

村上朝日堂 (新潮文庫) 作者:春樹, 村上,水丸, 安西 発売日: 1987/02/27 メディア: 文庫 村上朝日堂の逆襲 (新潮文庫) 作者:春樹, 村上,水丸, 安西 発売日: 1989/10/25 メディア: 文庫 図書館で借りてきた「村上朝日堂」と「村上朝日堂の逆襲」の文庫版を読…

本が集まる。

菊地信義の装幀 作者:菊地 信義 発売日: 2014/05/26 メディア: 単行本 見つからない「村上朝日堂」と「村上朝日堂の逆襲」を図書館で借りた。ついでと言ってはなんだけど好きな装幀家の「菊地信義の装幀 1997-2013」も借りた。アマゾンでジェイ・ルービンの…

おしまいと新しい始まり。

女のいない男たち [ 村上 春樹 ]価格: 1731 円楽天で詳細を見る 波の絵・波の話 作者:村上 春樹 メディア: 単行本 「女のいない男たち」まで読んで、ひとまず短篇集はおしまい。次はエッセイとかだけど年代順に読もうと思ったら「村上朝日堂」も「村上朝日堂…

「レキシントンの幽霊」と「神の子どもたちはみな踊る」。

神の子どもたちはみな踊る [ 村上春樹 ]価格: 1430 円楽天で詳細を見る きれいなスカーレットの表紙を持つそう厚くないムック「村上春樹ブック」を持ってるんだけどこれは「文學界」の1991年4月臨時増刊ということなのでもう三十年近く前に出たものだ。本棚…

「東京奇譚集」。

東京奇譚集 [ 村上春樹 ]価格: 1540 円楽天で詳細を見る 「東京奇譚集」は刊行されたときに読んでる。2005年9月のことで子供は四才になったばかり、まだ幼稚園には通っていず毎朝近くの公園に行ってはぴったり二時間遊ぶまで家に帰らなかった。親にとってこ…

「回転木馬のデッド・ヒート」から「夜のくもざる」まで。

長編に比べると短編集は短い時間で読めるような気がする。 「回転木馬のデッド・ヒート」が出たのは1985年で僕は翌年その単行本を買った。21歳だった。文庫版が出ていればそちらを買ったはずだけどまだ出てなかったんだと思う。ちなみにこの本は文庫版も持っ…

対照的な二冊。

うちにある中公文庫版の「中国行きのスロウ・ボート」には確か今はなくなってしまったブックセンター荻窪の四つ葉のクローバーを模したような柄のカバーが掛かっている。住所も電話番号も記載されているけど電話番号は市外局番抜きで今の八桁ではなく七桁だ…

単行本と文庫本。

こういうことを書き始めるとマニアっぽくてやなんだけど単行本と文庫本でテキストが異なるという話を聞くとなんとなく気になる。さらに村上春樹さんの場合「全作品」に収録される際にも手を入れられているという話なのでそれもすごく気になるけど正直そこま…