指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

続報。

今日は全然意気上がらず朝から暗かった。子供の願書用の写真を撮るのにできればスピード写真はやめた方がいいと判断して池袋のスタジオへ撮りに行った。青いオックスフォード地のボタンダウンシャツにショールカラーのネイビーのカーディガンを羽織った写真はなかなか品のある仕上がりになった。お弁当を買って帰って来て例によって澄みきりのロング缶を一本飲んだ後食事をし昼寝をしようと思ったけど一時間くらい眠れずにごろごろしていた後、うとうとしたかなと思ったらとてもいやな夢を見て目が覚めた。気分はここ半年くらいで最悪だった。
彼女を永遠に失った。もう言葉やまなざしを交わしたり、問題が解けて一緒に喜んだり、甘えられたり君だけは特別だよという気持ちで心を通わせることはできないのだと思った。それは本当に恋人を失った感覚にとてもよく似ていた。でも僕には彼女が自分から塾をやめたいと言ったとはどうしても信じられなかった。お母さんは僕にそう言ったのだけど。彼女自身は塾を続けたいと思っているのにお母さんがそれを阻んでいるとしか思えなかった。それくらい、彼女と僕との間には特別と言ってよいつながりがあった。彼女は僕を信頼していたしそれをきちんと感じることができたし僕は彼女の能力を誤り無く評価できていたし彼女もそれを感じ取っていたと思う。だとしたら塾に行けなくなった今、彼女はとても傷ついているかも知れない。僕とまるで同じように。
そこでお母さんのケータイにメールを書いてみた。そこで僕はある種の取り引きを持ちかけた。彼女を元に戻してくれたら、ある種の便宜を図ると。返事はまだ無い。