指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

米川良夫さんが亡くなった。

不在の騎士 (河出文庫)

不在の騎士 (河出文庫)

カルヴィーノを読み始めたのは、どこかで高橋源一郎さんが絶賛しているのをもう随分以前に読んだのがきっかけだった。初めて手に取ったのが「不在の騎士」で、訳者が米川良夫さんだった。すぐにご尊名を記憶できたのは、ロシア文学の翻訳家に米川正夫さんがいらっしゃったからだ。僕がドストエフスキーを集中的に読んでいた頃、新潮文庫版のドストエフスキーはほとんど米川正夫さんの訳だった。確か河出書房版の全集は、「米川正夫個人全訳」と冠してあったと思う。お二方は血縁ではないのだろうか。
その「不在の騎士」も今では文庫で読める。米川良夫さんのご冥福をお祈りしながら、カルヴィーノをゆっくり読み返したい。「良夫」を「りょうふ」と読むことは、新聞で訃報に接するまで知らなかった。