指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

遠い金沢。

出張と言えば早朝から新幹線に乗るのが通常だが今日は午前中来客があってどうしてもそれが出来なかった。会社を午後2時前に出て2時32分東京発のMAXに乗った。数日前に「えきねっと」で切符をとろうとしたら都合のよい時間帯の席がことごとく埋まっていて焦った。とにかく金沢までたどり着ければと少し余計に時間のかかる乗り継ぎでよしとした。念のため早めに切符を引き替えに行って確かめたらこれまで使っていた越後湯沢乗り換えで金沢まで特急はくたかというルートではなく、長岡乗り換えの特急北越とある。今から考えればこの時点で多少時間帯をずらしてでも他のルートに変更しておけばよかった。
越後湯沢を通り越して長岡に着きさあ二十分弱の乗り換え待ちだと思っていたら強風による部分的徐行運転のため北越は35分遅れだと言う。ホームの端の喫煙スペースで煙草を吸うとそれだけで頭がぼんやりしてくるほど寒い。時折みぞれも吹きつけ気分も暗い(長岡の方ごめんなさい。)。あたたかい待合室に逃げ込み併設されたそば屋に入るかどうか迷いながら小一時間やり過ごす。
午後5時過ぎ北越に乗ることができたがその時点で40分遅れということだった。結局金沢に着いたのがぴったり1時間遅れの午後8時15分。長岡から金沢間で実に3時間15分かかったことになる。金沢で食べようと思っていた夕食は、駅弁とビール二本に取って代わられた。車内で買った駅弁は十分後に期限が切れる表示がしてあった。僕はこれまでそういう仕打ちを受けたことがなかったけどもしかしたら特急北越では日常のことなのかも知れない。まあ電車が遅れなければ期限の1時間10分前の弁当が供されていたのかも知れないが、期限の1時間10分前の弁当というのでさえ少なくとも僕はこれまで買ったことがない。ええとなんて言うかすごい。決して安くない弁当なのに。あるいは決して安くない弁当だからこそ、ってこと?
いやあ金沢までが遠かった。橋本治さんの「愛の矢車草」が読めてしまった。おもしろかった。切なかった。