指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

求人広告。(その2)

勤務時間を午前10時から午後6時までとしていたので当然それが会社の営業時間と受け取られると思っていたが、求人広告の掲載された翌日の月曜日午前9時半頃一本目の電話がかかって来た。もしかしたらそれまでにもかかって来ていたかも知れない。それどころか日曜日にも無人の会社の電話が鳴っていた可能性もある。履歴書を持参の上面接に来て欲しい、そのための予約をこの電話で受け付ける、という主旨のことを伝えて翌火曜日の午後と翌々水曜日のスケジュールを30分毎に刻んで予約を入れ始めた。するとかかって来るわかかって来るわ、三時間ほどで十名を超える希望者からの電話があった。業者のウェブサイトにも告知が出たためそれ経由の希望者も二人いた。午後も結構な数の電話があり月曜日の夕方時点で火曜日の午後の面接スケジュールはほぼ埋まってしまった。火曜日の午前中は定例会議に当たっているので面接に割けるのは午後の時間のみだった。
ほとんどが女性でいずれも僕より年配だった。少しだけいる男性もほとんど僕より年が上だ。年齢制限は設けなかったがさすがに僕より年上となると少し都合が悪い。行く行くは正社員としてがんばって欲しいと思っているのに六十代の人を雇う訳にも行かない。面接に来る時間を割いてもらって申し訳ないとは思うが、それがまあ本音だ。
火曜日の午後面接が始まった。最初はふたりで応対する予定だったが、繁忙期のため僕ひとりで応対することになった。履歴書を見せてもらって気になる箇所を質問した後、週何日来られるか、時間の超過は可能か、勤務態度によっては正社員登用も視野に入れているがそれについてはどう思うか、という一番大切なところを一通り質問する。それから仕事の流れと具体的な作業について説明する。それから先方からの質問や希望について述べてもらう。早ければ十分ほどで終わってしまう。
ただ何しろ年配の方続きなので顔を合わせた瞬間に不採用が事実上決定してしまい、気を持たせるように面接を行うのは大変に心苦しかった。また自分の父親や母親の再就職に水を差す立場に立ってしまったように錯視されそれもすごく辛い。一通一通の履歴書が重い。
(つづく)