指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

求人広告。(その3)

二日にわたり十数名を面接した。全部の電話を僕が受け予約を入れることは不可能なので、途中から誰彼構わずに電話をとってもらいとりあえず履歴書の郵送を依頼する方法に切り替えた。
予約をとっておきながら当日になってキャンセルして来た人もふたりいた。面接の日程をずらしたい旨の申し出がなかったので要するにうちに対する興味を無くしたということだろうと解釈した。三十分早く来る人もいればひとりだけ遅刻して来た人もいた。でもたいていの人が時間より数分から十分程度早めに現れた。普通のおばさんが何人かとおとなしいおばさんが何人か、上品なおばさんがひとりと元気のいいおばさんがひとり。男の人はいずれも力の入った人たちだった。何かが空回りしている印象を与えた。ひとりだけ僕より年下だったのは男の子でこの子は物静かだった。
それから他の求人広告業者や人材派遣会社からの問い合わせが意外と多かった。さらに広告を出すのならうちに、とか人材が欲しいのならうちが斡旋したいという趣旨だ。後者で一社、御社の求人内容で人材派遣すると時給いくらになります、と、うちが掲載した時給の四百円増しの金額を言った業者があった。そういうことを言うのは大変に失礼なことなんじゃないかと僕は思うのだけどそうでもないんだろうか。僕にはその四百円がその業者がはねる上前に思えて仕方なかった。
面接に来てくれた人たちときちんとコミュニケーションがとれたかと言われれば甚だ心許ない。でもとりあえずひとりを押さえて明日前向きに二次面接を行う予定だ。僕以外の社員にも会って話をしてもらう。他の人たちには速達で不採用を知らせる手紙を出した。履歴書も一緒に返送した。また明日にもまだ履歴書が届くだろうからその応対もしなければならない。ただできればもう面接はしなくて済めばありがたい。これ以上面接をしたいような人からの履歴書は今のところ届いていない。
何て言うか世の中には本当にいろいろな人がいる。こういう形での求人はそのことを思い知った上でやるべきだと個人的には思う。何事も経験だと言われりゃまあそりゃその通りなんだろうけど。