指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

帰省。

家人と子供が家人の実家に帰省するので東京駅まで送って行った。数年前に買ったキャリーがどうにも使いづらいので、昨日東急ハンズで買い換えたのだが、今度のフランクフルト行きにも使えるようジャケットが収まるサイズのにしたらこれが馬鹿でかくて、小柄な家人に扱いきるか不安だった。第一網棚(新幹線のは網じゃないけど)にはとても載りそうにない。それで子供の座席の前に横倒しにして置いたら、子供の足も載せられるしちょっとした荷物を置くのにも便利でとりあえず安心した。
出発前に抱きついて、元気で、とひと言だけ言った子供は、車窓からのぞき込むと顔をくしゃくしゃにしたり、気を取り直してほほえんだりと忙しかった。ドアが閉まってから走り出すまでに随分時間がかかった気がしたが、走り始めたらふたりの姿はあっという間に見えなくなった。それで踵を返して帰途につき、新幹線が見えなくなるまで見送ることはしなかった。寂しいだけだ。
東京駅の構内をとぼとぼと歩きながら、そのとぼとぼさ加減を一番いとおしく眺めてくれるはずの人のことを思った。でもその人は今し方見送ったばかりだった。その人以外にそんなものをいとおしい思いで眺めてくれる人などいなかった。
向こうに着いた家人から来たメールには、このキャリーは私の言うことはなかなか聞いてくれない、とあった。ちょっと笑った。前のよりは全然いいと僕は思うんだけど。