指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

お茶くらい出そうよ。

初めての得意先へ行ったらこちらへどうぞと応接室に通された。担当とか上の人とか四、五人出て来て彼らを相手に熱弁をふるったけどお茶ひとつ出てこなかった。別にお茶が飲みたかった訳ではなく、お茶を飲むということに象徴されるなんか余裕みたいなものを相手に与えることがホストとしての礼儀なんじゃないかと思ったということだ。遠路はるばる、とは言わないまでもわざわざ訪れる労を執って下さった方に、せめてお茶くらい入れる思いやりを持ちたい。常に。