指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

すごく難しい。

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)
なんて言うかすごく難しい作品だと思った。作品が難解ということではなくどう読んだらいいかが難しかった。つまり、ケチのつけ所は結構ある訳だ。たとえば料理を通せば他者に対して察知力や想像力をあれほどの密度で働かせることのできる主人公が、どう考えてもある程度の準備期間を置かなければ実現できそうにない恋人の裏切りに本当にまったく気づかなかったのか、とか、またしても母と娘の確執の、その根拠がなんだかよくわからないじゃないか、とか。あるいは屠殺に対する主人公の解釈は気合いが入り過ぎて上滑りしていないだろうか、とか、お話全般が主人公にとってお誂え向き過ぎる、とか。
でも作品全体を覆う雰囲気が、そういう風に読むのは間違いなんじゃないかと思わせるし、細かいことに目をつぶればお話としてはおもしろく読める。これはこれでいいんじゃないかという気にさせる。要するにひとつの奇跡を描いたファンタジーじゃないかと決めてしまえば。でもこれって誉め言葉になってないか。
それとすごく余計なことなんだけど、映画化は主演が柴咲コウさんということだけど、宮崎あおいさんならよかったと思った。あなたがあおいちゃん好きなだけじゃない、と家人は言うけれど。え、でもそう思いません?