指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

墨を擦る。

5日が仕事始めで年始回り。午後4時に帰社した後、でかい仕事をふたつ抱えていたので取りかかり、9時までに全体の半分くらいを片づける。6日も一軒得意先へ行った他は同じ仕事の続き。午後8時頃全部終わる。去年も同じふたつの仕事を片づけたが、確かその前の年の年末には終わらせていた気がする。こんなに追いつめられたのは久しぶりだった。
7日は頼まれていた見積書、請求書をつくったり、販促物をつくったりした後、いよいよ原稿に取りかかる。半分ほどを書き上げたところでちょっと断れない新年会に行かねばならずタイムアップ。会が終わったのが午後8時で、9時近くに帰宅。
今日はもうひとつのいよいよ、子供の書き初めに取りかかる。場所が広い方がよさそうだったので会社に行って普通の半紙に練習。適当なところで書き初め用の長い半紙を取り出すと、墨汁が終わってしまったということで家人が買いに行く。が、コンビニにも無く近くの文房具屋は休みということで、仕方なく硯で墨を擦ることにした。しゃりしゃりと音を立てながら力を込めて墨を擦る。墨を擦っている間に心が落ち着くんですよ、と教えてくれたのは誰だったろうか。小学生の頃何年かお寺の習字に通っていたことがあるけど、そのときの先生だったろうか。確かに力と一緒に心がこもる。濃い墨、いい墨になりますように、と祈りのような心持ちになる。
適当なところで墨の濃さを確かめるために試し書きすると、大丈夫そうだったので本番に取りかからせる。ところが、書き初め用の半紙は紙質が普通の半紙と微妙に異なり、吸収がいいのかものすごくにじむ。最初に書いた線の太さから見る見るにじんで1.5倍くらいの太さになってしまう。これでは駄目だ。もう一度腰を据えて墨を擦り直してから今度は本番用の半紙で試し書き。かなり黒々と書けてにじみも出なかったのでそれで書かせた。
結果的にはいちばん始めに書いたにじんだ一枚が、バランスも良くすごくうまく書けていたけどまあ仕方ない。これさえ片づけばこの三連休にするべきことは他に何も無い。あ、いや原稿の続きがあったか。