指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

世界との距離を言葉で埋める。

発光地帯 川上未映子著「発光地帯」
川上さんのエッセイを読んでいると自分のものの見方が雑に思えて仕方ないんだけど、その雑な自分から振り返って川上さんの方を眺めてみると自分など比べものにならないほど遙かに多くの違和感に囲まれていらっしゃるように見える。自己をも含めた世界のあり方との距離が遠い、と言うか、自己をも含めた世界との間に深い深い谷間があると言うか、そんな感じだ。なぜわざわざ世界に「自己を含めた」を付けてるかと言うと、それはもちろん川上さんが自己に対しても違和感を持ってるような気がするからだ。自己も世界のうちに含めてしまったらじゃあそれを見ている「私」はどこにいる誰かということになるけど、この本を読めばその問いが実際には無意味なことがわかる。自己とコミで世界を相手に回してしまっても、それを見る私は必ずどこかにいるから。でなければ世界と自己への違和感はとっくに解消しているはずだ。
その私と、自己を含めた世界との間を川上さんは言葉で埋めようとしているように見える。コピー用紙のようにしわひとつない、直線的な言葉ではそれを埋めるのに効率的ではない。だから川上さんは言葉をくしゃくしゃに丸めて少しでも嵩を増やそうとしている。そのくしゃくしゃぶりが、あの独特の文体なのだと思う。