指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

発見の行き先。

あの空の下で 吉田修一著 「あの空の下で」
ANAの機内誌「翼の王国」に連載された短編を十二とエッセイを六編収めた本。帯には初エッセイとあり2008年に出た本だけど言われてみれば確かにこれまで吉田さんのエッセイというのは読んだことがなかった。小説はだいたい、エッセイは全部が旅を背景にしていてどの一編にも小さな発見がはめ込まれている。共感できる発見があり、ちょっとわかりにくい発見がある。作者にさえどうしてそうなのか説明のつかない発見さえある。旅の本質とは要するに何かを見つけることだ。場が見つかり、空気が見つかり、他人が見つかり、自分探しというよくわからない言葉とはまた違った意味で今まで知らなかった自分が見つかる。でもこの本を読む醍醐味はその後にやって来る。発見は発見者自身をどんな方向に跳ね返しどのような場所へ連れて行くのか。その語りの中に作者の真の姿が隠れている気がする。