指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

表情について。

離職して二、三ヶ月後、季節は真冬でハロワ以外には行くべきところも無くて家人と節約した昼食を食べながら常に不安で酔っているときを除くと気の休まることがなかったある日、鏡に映る自分の表情から生気が抜けているのに気づいた。目がぼんやりとして肌に張りが無く生きて行く気力にふたをされ一挙に何歳も年取ってしまったような印象だった。もちろん元々それほど見栄えのいい顔ではないんだけど目鼻や口の形やその配置とかいうこととは別の意味でだらしなくてひどく醜かった。ショックだった。このまま一生この生気の感じられない表情で生きて行かねばならないのかと思うと絶望的な気持ちになった。でも自分で仕事を始めるとその生気の無い表情がすぐに消えて行った。心の状態というのはこんなにも如実に顔に表れるもんなんだと思った。ハロワで僕は無意識に人と視線を合わせるのを避けていたんだけど今の自分が恥ずかしいということももちろんあったけど、他の人のそんな表情を目にしたくないという気持ちもあった気がする。それは本当に心からぞっとさせられるような表情だった。
(ハロワに寄せられる求人情報に実際より好条件を記す偽りが多いということが問題になっていると聞いた。わらにもすがる思いで求人に応募する人が今現在もたくさんいらっしゃると思うと本当にやりきれない思いだ。)