指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

誰にも似ていない。

ボーイミーツガールの極端なもの

ボーイミーツガールの極端なもの

いろいろな角度からいろいろな感想が言えそうだけど、作品の中にも登場し作品とは別な形で写真入りで紹介もされる多肉植物のことを考えたい。たとえばこんな風だ。

海王丸モンストローサ

▽この個体は、何らかの原因で腐り始めた種を残すため、生産農家が慌てて腐った下部を切り捨て、まだ生きている先端部分を接ぎ木にしたもの。
▽通常の海王丸というサボテンは太く曲がった刺が出るが、この個体は刺が退化してしまったために、ピーマンのようなぷりっとした肌で刺の無いサボテンになった。
▽刺の退化してしまう変異は、海王丸に限らずその他のサボテンでも起こることがあるが、この変異が起こると元の姿が想像できないほど変わった風貌になる。

まず、そういう個体が流通するだけの価値を持てることが驚きだ。写真を見ると確かに棒状のサボテンの先端に切り取られた別のサボテンが接ぎ木されているように見える。その上でさらに変異が起こっているものに対して「海王丸モンストローサ」という名前はどうやってつけられるのだろう。先端が海王丸で棒状の部分がモンストローサという種だという意味か。あるいはモンストローサというのが変異の名前なのか。
とにかく全部で十種紹介されている多肉植物の多くで変異が起こったり人工的な手が加えられていたりする。それらはひとつひとつが極限まで個性的で他のどの個体とも違っているように感じられる。そしてそれは多分この作品に登場するたくさんの主人公たちの似姿なのだ。それに気づいたとき、とても心を動かされた。と同時に作者が多肉植物に惹かれる理由が本当によくわかった。僕たちは皆誰にも似ていない。