指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

大島弓子さんの「ロスト ハウス」。

ロストハウス (Young ros〓 comics DX)

ロストハウス (Young ros〓 comics DX)

このブログを読んでくれている(つか、URLを知らされたので半ば強制的に読まざるを得ない)Yさんに前回会ったとき、この本を読んだか尋ねられた。彼女と僕は大島弓子さん以外にも多くの作家が好きなことで意見が一致している。「ロスト ハウス」についてはタイトルも憶えているし表紙もおぼろげながらわかり、確か持っているし読んだはずだがストーリーがまるで思い浮かばない。どんな話でしたっけと尋ね返すと、田舎から出てきた女の子がスターになったり、別の女の子がひと夏で老いて行ったりする話が収められた短編集だということだ。Yさんはもしかしたら最近になって読んだのかも知れない。かなりの入れこみようだった。しかしここまで聞いても例によって一向に話を思い出さない。「いちご物語」をまだ読んでいないのか、という軽い詰問を受けながら会話は終わった。

それで、雨と子供の体調不良のせいで時間がぽっかり空いた昨日の午後、そのことを不意に思い出して本棚を漁ってみた。「ロスト ハウス」はやはりあった。早速読み始めたところ、すぐにああ、この話かと思い出した。女の子がひと夏で年老いてしまう話は「8月に生まれる子供」だった。それにしても何という幕切れだろう。確かに大島さんは作品をきっちりしたキメ台詞で終えることが多い。どれもすごくかっこいい。しかし余韻の大きさという点で「8月に生まれる子供」ほどのものがあっただろうか。*1この話をよくも忘れていられたものだと思った。

いつ頃の作品なのだろうと気になって奥付を見ると、この単行本は1995年の初版だということがわかった。またしても1995年。僕は松葉杖をつきながら、書店でこの本を買ったことになる。そして大島さんの単行本の中ではつい最近のものという気がしていたのに、もう10年も経っている。大好きな猫の「サバ」ものを繰り返し繰り返し読んでいたのも、おそらくそれ以前の話なのだろう。*2

「8月に生まれる子供」については、もうひとつだけ思い出がある。子供の出産予定日が8月だったので、妊娠中の家人にじゃあ大島さんの作品と同じで「8月に生まれる子供」だね、と何の気なしに言ったのだ。*3家人はこのことを大変よく憶えていて、そのせいでかなりつらい目に遭ったのだけど、その話はまた別の機会に。

今日の記事は「ロスト ハウス」について思い出させてくれたYさんへの感謝を込めて書いた。

*1:いやきっとあるんだろう。僕はまだ「いちご物語」も読み終えていないし。

*2:これは未確認です。

*3:この時点では内容はともかく短編のタイトルははっきり憶えていたようだ。