- 作者: 関川夏央,谷口ジロー
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2002/11/12
- メディア: 文庫
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- 作者: 谷口ジロー;関川 夏央
- 出版社/メーカー: 双葉社
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「『坊っちゃん』の時代」も決して読みやすくはなかった。でも暇な時間を惜しんで少しずつ熱心に読むことができた。明治の文豪たちの姿は他のどんな歴史群像よりもかっこよく見えることがその理由のひとつだ。政治で産業で芸術であるいはそれらも含めたあらゆる分野でたくさんの明治の人たちが近代化を受け止めなければならなかった。そしてあらゆる分野でヒーローたちが現れ彼らの強い物語が生まれたに違いない。その中でもなぜ文学を担った人々が一番かっこよく見えるか。実は僕にはその理由が今ひとつよくわからない。只単に個人的な好みの問題かも知れないし、もっと他に何かがあるのかも知れない。これはもう少し考えなければならない個人的な課題だ。
「『坊っちゃん』の時代」では物語の中心は夏目漱石の「坊っちゃん」の成立過程に置かれる。特にラフカディオ・ハーンの逸話には胸を突かれた。「第二部 秋の舞姫」は森鴎外の「舞姫」のモデルとなったと言われるエピソードが描かれる。近代を追う頭と追いつかずにもつれる足。そこに文豪たちの罪悪感があったように読める。
言葉の遠い向こうにしかない明治が生き生きと現前する気がする。