指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

読み終わりましたよ。

アサッテの人

アサッテの人

今日本がサウジアラビアに一点取られたとこなんだけど、と書いている間にすぐに追いついたんだけど、これってオーストラリア戦でも見た展開のような気がする(サッカーの話)。
そんなことより。
「アサッテの人」を読み終えた。すごくおもしろかった。もちろん世間がどういう風に読むかは全然わからないけど、今まで読んだどんな芥川賞受賞作よりおもしろかった、と自己責任で言ってしまおう。もっとも芥川賞受賞作をリアルタイムで読んだのは、綿谷りささんの「蹴りたい背中」以来のことだけど。「蹴りたい背中」よりおもしろかったし、「限りなく透明に近いブルー」よりおもしろかったし、「日蝕」よりおもしろかった。つまりまあとにかくものすごくおもしろかった訳だ、僕には。
取りざたされている「ポンパ」だけどそんなこと知ってても仕方ないとは思うんだけどこれは確か日立(追記、もしかして東芝?)のかなり昔のCMキャラクターに同じ名前のものがあった憶えがある。「ポンパくん」といって何色かのきれいな羽を持ったオウムのような鳥のキャラクターだった。ポンパは「ポン」と「パ」に分かれていて当時テレビのスイッチを入れると画像が現れる前に結構な待機時間が必要だったものを、スイッチをポンと入れれば瞬時に(実際には瞬時という訳には行かなかっただろうけど。)パっと画像が現れるというのを売りにした機種を宣伝するのに使われていた。そしてこのことは作品の中で説明されるポンパの出自やイメージの一部と矛盾しないので、それほど間違った推測ではないと思うのだけど、作品中のポンパの出自を事実に即して考えること自体が無意味と言えば言えるし、作者自身このことは充分に心得た上であえて出自をぼかして記述しているようにも思われる以上、尚のことこんなことは作品にとって意味はない。
図書館で群像誌を閲覧し数ページ読んだ段階では晦渋な作品のような気がした。でも決してそうではなくむしろとりつきやすい作品だと思う。晦渋な作品のようでいて読み出すとおもしろい作品。個人的に好きな多くの作品がその範疇に入るがそれは作品にとってあまり幸福なことではない。・・・と思われる。