指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

夏休み一日目。

午前中は子供の希望をいれてプールで泳いだ。夏休みの宿題のためか天候のためか子供たちの姿が少なくすごく空いていて、僕も結構泳いだ。ばた足だけで泳ぐのも楽しい。それは子供に教えてもらった。
昼にビールを飲んで昼寝したら驚くほどよく眠れた。目覚めたとき、帰省中に義父がそうしてくれたように子供を夕方の散歩に連れて行ってやりたいと思った。その旨を伝えると子供はそれまで遊んでいたプラレールをものすごい勢いで片付けた。バスに乗って東京ドームシティーまで行った。ヴィレヴァンで携帯灰皿を買った。子供には向かいの駄菓子屋で好きなものを選ばせた。
あいにく気温が下がって夏休み感が薄まったけどそれでもこれが僕の夏休みだ。それは主に子供の夏休みの思い出を少しでも増やすことに使われ、そのことによってのみ意義を認めることができるささやかな夏休みだ。僕自身がそんな風に育てられて来て、だから僕の夏休みの思い出は巨大だ。子供の夏休みも浜から眺める入道雲のように巨大であればいいと思う。潮風の肌触りや匂いや音、砂地のふわふわや寄せる波の果てしなさ、暮色の中の何かが取り返しようもなく行ってしまう感じ、明るいものから切ないものまでいろいろな、本当にいろいろな情緒を胸の中にため込んで欲しい。そしてどこにも必ずほんの少し停滞の感じが混ざっていることにも気づいて欲しい。
明日は子供の誕生日だ。六年前ママもパパも本当にすごくすごく大変な思いをしてお前を授かったんだよ。