- 作者: ジョンアーヴィング,John Irving,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 文庫
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当時なぜそれほどまでにアーヴィングに取り組もうとしていたかと言えば、村上春樹さんの押しがあったからだ。
その後もアーヴィングはきちんきちんと作品を発表し、タイムラグの長短はその都度違ったけど結局はそのほとんどが翻訳された、と思う。でも気にはなりながら決して読もうとは思わなかった。アレルギーに近い反応だ。
でも本作でアーヴィングへのいとぐちが見つかった気がした。まず表題作がよかった。「ピギー・スニードを救う話」はピギー・スニードを救う話ではない。「ピギー・スニードを救う話」をテーマにした、ピギー・スニードがらみの、実際にはピギー・スニードを救わない話だ。物語の可能性と不可能性がそこでシビアに語られる。そしてこの体験をありきたりなトラウマにしないところがすごくいい。
本作がアーヴィングの主産物である長編小説だったら、他の作品と同じようにやり過ごしてそれで終わっていたと思う。でも唯一の短編&エッセイ集と言われて何か今までとは違うとっかかりみたいなものがどこかにあるかも知れないと思わされた。そういうとっかかりみたいなものが見つからないか何となく機を窺う程度には、アーヴィングを読みたいとずっと思って来たことになる。繰り返しになるけど、ジョン・アーヴィングのことを忘れたことはなかった。