指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

純粋さについて。

芸術の理念と思想の理念。それらそれぞれの先には理想の楽園が理念を抱いた人の数だけあり得る。楽園なんて本当は先験的にあり得ないのに。あるいはあったとしても誰とも共有なんてできないのに。でも主人公たちは純粋に愚直に己の理想を追い犠牲を顧みない。そういう生き方は好きではないが(間違っていたと気づいたときにやり直せないから)、共感と感動は呼ぶ。作品の文体のせいだ。これは歴史小説かも知れないが、いわゆる歴史小説の文体ではない。
もうひとつ、性が全編を色濃く染めているのがこの作品の特徴でそれは僕にもすごくよく伝わって来た。マオリの男女(おとこおんな)に導かれてコケが川で射精するシーンはものすごい開放感だった。美しいシーンだった。ええと、こういうのって年を取らないとわからない感覚なんでしょうか。
すごくすごくおもしろかった。