- 作者: マリオ・バルガス=リョサ,田村さと子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: ハードカバー
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思想に取り憑かれたのは女性で芸術に取り憑かれたのは男性だ。このふたりはかなり異なっている。前者は近代の産み落とした弊害に対して近代的な合理性で対抗しようとする。後者は近代がやせ細らせた芸術に対し近代以前の生命力を吹き込もうとしている。前者は同性愛の経験もあるが基本的には性に不寛容であり後者は性を芸術に不可欠な力と見なし未開の男-女(男なのに女として扱われたりその逆だったりする境界的な性)とも交感する。前者はストイックで後者は享楽的だ。個人的に女性の姿にこれまでの自分を男性の姿に今の自分を見ているような気がした。それはもしかすると本当に個人的な感想に過ぎないかも知れないが、書き留めておく。
問題は楽園に辿り着く前に死んでしまったらそれは悲劇なのかということだ。そうだとしたら楽園を胸に抱くこと自体がすでに悲劇の始まりということになってしまう。楽園は先験的にあり得ないからだ。死ぬこと自体は悲劇でも何でもない。楽園という言葉が悲劇的なのだ。