- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: ハードカバー
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僕たちが作品(この作品に限らず、たとえば世界の中心で何か叫ぶような作品)に描かれるなまの愛情(らしきもの)に感動するのは、愛情というのがいかに弱いものかを身にしみて知っているからかも知れない。そんなに弱いものをむき出しにして世界に立ち向かうときの、その勇気みたいなものに感動しているだけなのかも知れない。本当は人が愛情を根拠にして何か言うときには、愛情を補強する何か別のものが常に必要なのかも知れない。その補強する何かまでをひっくるめて愛情と言ってしまっている、それだけのことなのかも知れない。これは子供を持つ親が自省したならかなりのパーセンテージで共感してもらえる問いかけのように思われる。
子がそのことを親に見えるような形で照らし出す。僕の子供もおそらく日々同じ作業にいそしんでいる。それに気づく度に、この作品の舞台にあるような荒涼とした灰色の野原に繰り返し引きずり戻される気がする。そこは、本当によくできた比喩だけが指し示すことのできる、スーパーリアルな場所なのだ。