指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

10月に読んだ本。

ずっと雑記ばかり書いていたのは生活が何となくあわただしく忙しく、腰を据えて何かを考えたり書いたりする心の余裕が無かったためと思われる。海外出張には予定していた光文社文庫版「カラマーゾフの兄弟」は持って行かず、代わりに柴田元幸さんの訳されたジャック・ロンドンの短編集その他を持って行った。最近の柴田さんはこれまで以上にノリノリで精力的に仕事をこなされているようだ。「Coyote」でも頻繁に仕事をなさっているし、「Monkey Business」なんかも手に取ったことはないけど、定期的に刊行されているようだ。オースターの新刊も出たんだっけな、買わないと。もっとも「火を熾す」はまだ全部読んでない。
アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール (新潮文庫)

少し前に買って読み差しだったのを持って行き飛行機の中で読み終えた。やはり、と言うべきか「微笑」が一番心に残った。でもとりあえずどの短編もおもしろかった。無意識に抱いてしまうオブセッションの恐さというか、そういうものがどの作品にも共通している気がした。少しずつ狂気じみている。これまで小島さんの作品は「抱擁家族」しか読んでなくてそれもかなり前の話なので、探し出して読んでみたいと思った。
俺、南進して。 (角川文庫)

俺、南進して。 (角川文庫)

これで単行本で手に入る町田さんの小説は全部読んだことになる。悪い夢の感触を持つ作品だ。荒木さんの写真もおどろおどろしいと言うか、禍々しいと言うか、写真の表面がぶつぶつと粒子状と言うか、とにかくインパクトがある。ただし、写真とストーリーにどういう関係があるかということは僕には判断できなかった。いや、全然関係なくて不協和音のみ聞こえてくるのならそれはそれでひとつの狙いであり達成だと思うけど、小説の一場面を再現したような写真もあり、それは物語に介入したい意志を表していると思うんだけど、そういうのは何て言うかすごく安易なやり方みたいな気もし、真意が測りかねた。これは写真に対してまるで審美眼を持たない自分のせいだと言えば、まあその通りだ。
これしか読んでないのかなあ。我ながら少ない。