指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

食べるなとは言えない。

昨日家人が珍しくひとりで出かけると言うので子供とふたりで半日を過ごした。昼食は例によって東京ドームシティー一蘭にしようと思っていたら、ラーメンはちょっと飽きたと言う。今日はママもいないことだしお寿司でも食べに行こっか、とか言ってる。ママもいないことだし、の意味が不明だ。まるで寿司を食べるのに家人がいたら何か不都合でもあるかのような言い草だ。大体なぜ昼間から寿司なんか食べなきゃいけないのかわからない。でもまあせっかくの希望だからと思って近くのあまり高級でない、でも回転はしない寿司屋へ連れて行った。ランチメニューから選ばせようとすると自分の好きなネタを握ってもらうのだと言う。家人の実家に帰省している間にそんな注文のしかたをしたらしい。それで好きにさせて自分の分はケチってちらし寿司と生ビールにした。すると食うわ食うわ、三十分あまりの間に寿司二十貫を平らげた。赤身と中トロとタコとホタテが好きらしい。あぶりトロとかも頼んでいる。でも子供と何かを食べに行ってこれ以上食べるなとは言えない。親としては常に子供がお腹いっぱいになるまで食べさせてやりたい。
会計は五千円余りで伝票を見るとその七割が子供の食べた分だった。君が食べたひとり分の金額でママとパパはふたりで食事してそれで結構満足してるんだけど、と思うだけ思ってもちろん口には出さない。