指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

一筆書きのような小説。

妖談
長いものでもおそらく十ページにはならない掌編小説集。そのほとんどが人間の愚かしさや業の深さについて書かれている。おそらく僕などの方が作者よりずっとゆるくて曖昧な倫理しか持たないので、車谷さんの作品を読むときには、ここまで突き詰めるのか、凄いなあ、という感じがいつもする。この本でいちばんそれを感じたのは、自分の作品の読者を非難する言葉が出て来たときだ。そこまで行くとじゃあなんで書くんですかね、という気がするけど、作者の倫理の通し方、その徹底ぶりからすれば、読者でさえ非難の対象となるのも無理の無いことかも知れない。
一筆書きみたいで、車谷さんの作品の中では読みやすい方だし、すごくおもしろいけど、そのおもしろさの幾分かは作者の指摘通り、一種ののぞき趣味のようにも思われる。