指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

中上健次さんの本を久しぶりに読む。

君は弥生人か縄文人か 梅原日本学講義 (集英社文庫) 梅原猛 中上健次 「君は縄文人弥生人か」
中上さんの本はまあだいたい持っているし没後刊行された全集も揃えたけどどちらも今は手の届かない書棚の深いところに埋もれている。ただし今日渋谷のブックオフでこの対談集を見つけたとき読んだことが無かったような気がして買った。読み終えてみたけどやはり読んだことの無い本だった。
なんて言うかタイトルはちょっとどうかと思うけどなにしろ大変に読みやすくわかりやすい。アイヌの位置づけ、新宮は神倉神社のお灯祭の解釈、熊野、縄文人弥生人と話題は多岐にわたっているようでいて案外まとまりがあるようにも思われる。ただ少し残念なのは両者の間に相手への遠慮と言うか、礼儀正しさと言うか、なんとなく本音を言うのを避けたり相手に迎合したりという雰囲気が伺われることだ。吉本さんに、あなたは小説を書く根拠を本当は失ってるんじゃないか、ととても辛辣なことを言われ、そんなことはないと相手にすがりつくように中上さんが抗弁する、みたいな、丁々発止なところは無い。
もう随分前、まだ学生だった夏のことだけど新宮へ行ったことがある。三日間滞在して神倉神社にも登った。そのとき買ったお灯祭で使う松明の小さいレプリカがまだうちにある。まだ結婚する前の家人は僕の部屋でそれを見てもしかして新興宗教の信者とかだったらどうしよう、と真剣にビビったらしい。そんなことを思い出した。