指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

声に出して読みたい川上未映子。

先端で、さすわさされるわそらええわ 川上未映子著「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」
詩ということでいいんだろうか。何が書かれているか理解するのはとても難しい気がする。意味を抜きにして文体だけを楽しむとしたら、と言うかそういうことができればという話だけど、声に出して読んでみるといいかも知れない。
川上さんの作品はリズムと意味の間のどちら側を重視しているかで詩→短編小説→長編小説と段階的に推移しているように思われる。亡くなった吉本さんの言葉で言えば詩はより自己表出側であり長編小説はより指示表出側という訳だ。いかな川上さんと言えども今のところ長編小説の背骨には物語を使っているので、指示表出性が高くだから意味のわかりやすいものになっている。意外なのはエッセイで、普通エッセイは物語以上に指示表出性が高くて読みやすくわかりやすいものになるのが通例なのに、川上さんのエッセイは少なくとも長編小説よりも自己表出の側に傾いていてだから長編小説よりも読みづらい。
個人的な想定ではエッセイの言葉をもっとわがままと言うか身勝手と言うか不親切と言うか、そういう方向に突き詰めるとこの作品ができるのではないかと感じられる。つかそれが自己表出性が高いということの意味だ。読者への通路をものすごく細く引き絞りその分どこか別の高みが目指されている。残念ながら僕が判断できるのはそこまでだ。