指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

貫く。

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

これまで読んだきた作品のいずれにも言えることだけど、この作者の描く主人公の倫理はどれも一風変わっていてそれらに共感できるかと言えばちょっと難しいということになる。個人的にはもっとずっと凡庸で当たり前の考え方しか持っていないからだ。家人とふたりで世界を閉じてしまう瞬間があるしそれを幸せだとも当たり前だとも思う。でも「この世は二人組ではできあがらない」と言われると、じゃあその「この世」はどんな世なんだろうと興味を持つ。そういう感じでこの作者の作品を読んでいる。そして主人公のものとも作者自身のものとも受け取れる感受性の形に驚き、少なくともこの人に凡庸という言葉は絶対に当てはまらないだろうなと思う。そういう読書もとても楽しい。