指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

どこへ帰る。

「開店休業」の吉本さんのエッセイはちょっとつらくて読めないと家人が言う。ひとつには現世とあの世の中間くらいのところで書いてるように思えるからで、もうひとつには子供の頃のことを回想している話題が多くてそういうのも切ないからということだった。年をとると子供の頃に帰りたくなるというのは、前にテレビで見た徘徊するご老人の話にも出て来た。その人がふらふら外に出て行ってしまうのは子供の頃住んでた家に帰ろうとしてのことだと奥さんが言っていた。そう言えばうちの父親なんかも徘徊こそしないものの最近しきりに生まれた場所に帰りたがる。でもひとところに続けてせいぜい数年しか暮らしたことのない僕はどこへ帰りたがるんだろうか。我がことながらちょっとわからない。今の部屋にはこれでもう15年以上住んでいて今まででいちばん長くいることになる。